<11・プロット。>

4/4

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
 大抵、物語の書き出しとクライマックス、結末は書きたいところなのだ。  が、その間がどうしても埋まらない。それこそ、桃太郎ならばおじいさんおばあさんの家を旅立ってから鬼ヶ島へ行く道中がどうしても決まらなくて書けない、みたいなものだ。  それも、きびだんごを渡して犬、猿、雉を仲間にする、というのが先んじて決まっていれば格段に楽になるだろう。 「話が思いつかなくて手が止まりがちなタイプほど、プロットは細かく書いておいたほうがいい。ただし、多少“遊び”を用意しておいた方が良くはある。書いている途中でもっと面白い展開やネタを思いついた時どうするか、というのもな」  もう一つ、と彼は続ける。 「執筆……というよりそのための集中力を身に着ける方法の一つが、連載作家のつもりになることだ」 「連載作家のつもり?」 「そう。例えば雑誌に、毎週一話載せるとするだろう?ならば、一週間に最低一話は書かないといけない。……そういうつもりで、書く時に“今日はその一話分だけ書く”と決める。で、その一話分の長さをおおよそ揃える。俺の場合は、四千文字から六千文字の間でざっくり推移することが多いな。特に四千五百文字くらいが多いか」  この方法のメリットは大きいんだ、と帝。 「一話書いたら休憩。休憩したら次の一話を書く。こうすることでメリハリができる。同時に、進捗がわかりやすくなる。例えば四千文字で一話だとしたら、十話書いたら総文字数が四万文字を越えたとはっきりわかるだろう?公募の時の、文字数の計算が格段にやりやすくなる」 「あー……!」  それは、間違いなく大きいメリットだ。  今まで何度か公募のため長編を書いたが、全部書いたあとで文字数を計算したら思ったより文字数が多かったとか少なかったとか、そんなわけで規定外になってしまい結局応募できなくて別の公募にスライドさせた――なんてことがあったのだ。  特定の公募を目指して書くなら、文字数の規定違反など論外である。  完結させたあとで削ったり増やしたりというのは精神的にもかなりキツい。多少の誤字脱字修正や言い回しの変更程度で済ませたい。一話何文字、で毎回書いていくことができれば、その文字数ギャップは大幅に減らせるだろう。  この日までに“何話”書けば足りるはず、というのも想定しやすい。スケジュールも、ただの文字数で換算するより組み立てやすくなるかもしれない。 「すごい。……執筆の方法に、そういう工夫の仕方があるなんて」  非常に参考になる。藍子は手帳を取り出して言う。 「もう一つはなに?余計なことを考えて手が止まってしまう、っていうのは」 「それこそ、最初に言った話の通りだな」  藍子の言葉に、帝はにやりと笑って言った。 「己の創作を、己が邪魔してしまう現象ってのがあるんだよ」
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加