<12・オジャマ。>

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<12・オジャマ。>

「自分の創作を自分が邪魔してしまう?それが、作家にとって一番の敵は自分、だと?」  藍子の問に、そう、と頷く帝。 「書いていけば書いていくほど自信がつく反面、不安にもなってくるものだ。己の力量を理解し始めるからだろうな。見上げればいつでも上には上がいて、そういう人達と比べてしまうというのもある。作品投稿サイトならブックマークの数やイイネの数なんかで比較したくなる時もあるし、ランキングで格差がつけられる。他人と比べて、自分の作品はなんて駄目なんだとか、全然面白くないんじゃないかと思ってしまったりする」 「あるあるだよね、それは」 「時には厳しい感想が寄せられたりもするしな。……でも、そういうものが一切なくても関係ないんだ。人から叩かれなくても、それこそランキング上位にいることができても、自分で自分の作品が面白く思えなくなったりする。安定して書けない原因のもう一つはそれだ。この話は本当に面白いのか、読みづらくはないのか、自分が伝えたいことは伝わっているか、そういうものをついつい書きながら考えてしまう。で、手が止まってしまうんだ。これは、プロットを念入りに考えていて、先の展開が決まっていても起きうること。違うか?」 「まったく、仰る通りで」  書き始めた頃――それこそ、中学の頃、えみなと一緒に小説を書いているだけの時は全然気にしていなかったことである。  何故なら、一から十まで趣味の範囲で、作品をえみな以外に見せることもなかったのだから。面白いはずだ、と平気で自画自賛できた。唯一の読者であるえみなも褒めてくれていたから尚更に。  書いているだけで楽しくて、それを読み返すだけで面白かった。  当然といえば当然だろう。文章に書いていないこと、意図、描写。それら全て、作者である自分達はわかっていて当然。描写の過不足を感じることなんて、脳内補完もあってあるはずもないのだから。  それが変わったのはいつだったか。  そう、公募に応募するようになって――WEBサイトに投稿して、他の人の作品をもちゃんと読むようになってからだったような気がする。  ワナビ。作家志望で、だけどまだなれていない人達。  己をやや卑下してそう自称するアマチュアたちでさえ、藍子とえみなより遥かに上手く、面白い作品を書ける人はいくらでもいたのである。そこで“いや、私の作品のが面白いし!”なんて開き直れるほど自信家ではなかった自分達。  そしてそんな自分達が本気で面白いと思った作品でさえ、時に一次選考で落ちるという現実。自分達が思っている以上に、小説家への道は険しく遠い。そう思い知らされ、焦るようになったのである。  そして考えるようになってしまった。自分達が書いている作品は本当に、何も知らない第三者が読んで面白いものなのかと。 「……書いてる途中で」  ぽつり、と藍子は呟く。
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