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「やっぱりこの語尾の方がいいんじゃないか、とか。此処はもう少し、キャラの特徴を書くのに文字数を割いた方がいいんじゃないか、とか。そういうの、いちいち気にしちゃって。私の場合はさっき六条さんが言った“先の展開が思いつかなくて手が止まる”もあったんですけど……最近は、細かいところをついつい気にしちゃって」
その上で、問いかけてしまうのだ。この作品は面白いのだろうか、と。
「面白くないかもしれない、って思ったらすぐ止まっちゃう。完結させても意味ないんじゃないかって思ったら、もうそこで駄目になっちゃう。結局そうやって、序盤だけ書いて捨てちゃった物語がたくさんあって。……でも、かといって後でそれを拾い上げて書きたいとも思えなくて。そしたらどんどん書けない話が積み上がって、スランプになっていくというか。そういうの、避ける方法あるもんなのかな……?」
悩みすぎているのが駄目なのはわかっている。
けれど悩まないようにするにはどうすればいいか、その答えが容易く出たならば、誰もこんな風に苦しんだりはしないわけで。
「スランプを完全に避ける方法はない」
きっぱりと帝は告げた。
「だが、プロになったらスランプは可能な限り避けなければいけないし、場合によってはスランプでも無理やり書くスキルが求められる。仕事で、金貰ってやってるんだ。思いつかないので、書けないのでできませんでした、じゃ話にならない。当然そんな作家に仕事が来るはずがない」
「デスヨネー……」
「だから、なりにくくする努力、可能な限り早く乗り越える努力をする。その方法を、アマチュアのうちに見つけておくんだ。……例えば、余計なことを考えて手が止まる現象。これもどうにかして乗り越えていくしかない」
結論を言えば、と彼は続ける。
「余計なことなんか考えないに限る。俺ならいつもこう思うね。……完結まで書かなきゃ、面白いかどうかなんてわからない、って。だから、面白くないんじゃないか?と思ってもひとまず完結まで書く。細かい誤字どか、表現の被りとか、もうそういうのもちらっと思ってもスルーする。そういうのは、完結させた後で、誤字脱字チェックする時にざっくり直せばいいんだよ」
「ええ、でも……」
「言っておくが、プロだろうがなんだろうが誤字を完全に防ぐなんて無理ゲーなんだよ。できるわけない。無理無理無理。人間なんだからミスは起きて当然。だったらもう、完結を優先させる方がいい。そこで立ち止まってうだうだしてたらいつまでたっても完成なんかしない」
「で、でも!誤字脱字はそれでいいとしても、完成させても面白くなかったら!」
そう、いつも思ってしまうのだ。
「完成させても面白くなかったら、その物語って無駄になっちゃう……!書いた苦労なんて水の泡じゃない!」
自分で言って、気づいた。
ああ、自分が序盤だけ書いて書き捨ててしまってきたのは――そう、努力が無駄になる、のが辛かったからなのだと。
「その考えが一番駄目」
「ぎゃ」
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