<13・シュウセイ。>

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 *** 「……ううう」  帝とご飯を食べに行った約一週間後。金曜日の夜、自宅にて。  藍子はパソコンで、WEBサイトに投稿した自作品を読み返していた。  それは秋山ライト文芸新人賞に応募したホラー小説、“地獄のバトル”の序盤のシーンだった。 「新鮮味は少ないかもだけど……それなりに、緊迫感あって面白い、と思うんだけどなあ」  パソコンで、何度も何度も原稿をチェックし直した。誤字脱字に関してもかなり潰したと思うし、文章も推敲や改稿も頑張ったつもりなのだ。  できるだけ若者にも読みやすく、刺激的で、続きが読みたくなるような物語を目指したつもりだった。  主人公は女子高校生、田崎由梨(たざきゆり)。彼女の一人称で、物語が進んでいく。学校帰りに黒塗りの車に強引に押し込まれ、誘拐された由梨は、気づけば森の奥にある屋敷の中にいて――というシナリオだ。彼女を含め、数十人の男女がそこにはおり、運営を名乗る男に説明を受けるのである。  この中の一人だけを生き残らせてやる、と。  お前たち全員で殺し合い、優勝者を決めろ、と。殺し合わない場合は、この屋敷と敷地を爆破してまるごとミナゴロシにする、と。  誘拐されてきた者達は死にたくないがために、渡された武器を手に殺し合いを初めてしまう。臆病な性格の由梨はどうにかここから逃げ出すべく、同じく巻き込まれた幼馴染の深瀬栄太(ふかせえいた)と共に脱出方法を模索する――とまあこんな話である。  デスゲームは昔からの王道。最初は幽霊が出てくるホラー小説を書こうと思ったのだが、目新しいものが思いつかなかった上刺激が少ないと感じて人間同士の殺し合いゲームに変更したのだ。女子高校生が主人公で、イケメンの幼馴染がいて、彼とのロマンス要素もある。そして、二人で力を合わせて脱出を目指すという少年漫画さながらの王道展開もある。  序盤がダレないように、プロローグはなるべく短くして早々にデスゲームを始めたし、最初の方だけ読んで飽きて放り出してしまいたくなるような構図にもなっていないはずだ。ゲームの内容も単純な殺し合いで複雑性はない。  推敲もがっつりこなしたし、一次審査を通るくらいは余裕だと思っていたのに。 ――なんで、一次も通らないで落ちちゃったんだろ。  何か、応募規定の読み落としがあったのだろうか。  記憶の通りなら、あらすじの添付を忘れたとか、文字数規定違反だとか、そういうこともしていないはずである。そもそも秋山ライト文芸新人賞は、文字数規定が七万文字から二十万文字という非常に緩い公募だ(原稿用紙の枚数などではなく、純粋な文字数で規定してくれるのは非常にありがたいといえる。なんといっても、原稿用紙に流し込んだら規定違反だった、などの面倒くささがないからだ)。
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