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『細かいことは、さっきパソコンのメールに添付したテキストファイルに書かせてもらったが。簡単に概要を説明するとな。……なんていうかあんたが、何をもってああいう話を書いたのか、その意図は理解してるんだよ。多分、冒頭からグダらない話を書こう、刺激的でぐいぐい読者に読ませる作品を書こうとしたのだろう。そういう意味じゃ、デスゲームという選択肢自体は悪くない。幽霊が出てくるものよりもメリハリはつけにくいし差別化が難しいが、人間の心理を掘り下げて書くにはぴったりの題材だとも思うしな。何より、デスゲーム系はなんだかんだで昔から人気がある。ただ』
『ただ?』
『いくらありきたりになりがちだからといっても、いきなり殺し合いさせるだけじゃ差別化もへったくれもない。もう少し、他の作品にはない斬新さがないと“なんだこれつまらん”になるだけだぞ』
それは、と藍子は言葉に詰まった。
自分でも、ちょっと思っていたことだ。あくまでゲームのスリルを味わってもらうのが目的の話であったため、運営側のゲーム開催目的もルールもかなりシンプルにそぎ落としたものにしたのである。
何より最初に参加者をかなり増やしたということもあり、複雑なルールにすると文字数が多くなりすぎて規定オーバーになりかねないと思ったのもあるが。
『というか、冒頭から置いてけぼりになる。主人公について分かることが“女子高校生”ってだけなのもきつい。感情移入できない。臆病でびびって理想論振りかざしている上、戦うこともせずに逃げているだけなので段々と見ていてイライラしてくる。最終的に脱出まで行くが、努力しているのは幼馴染の栄太であって主人公の由梨じゃない』
『あぐ』
『臆病な主人公を最後まで臆病なままさせておくなんて愚の骨頂だぞ。もちろん、臆病であってもそれ以外に武器や魅力があるなら話は別だが、由梨にはそれもない。最後までビビリ散らかして、栄太が大怪我をした時は泣いて死なないで死なないでと縋っているだけ。最終的に、由梨の髪型さえもわからないまま終わるし、なんでこいつ主人公にしたの感が半端ないし。栄太にはまだ魅力がないわけじゃないが、むしろそれゆえに由梨が足引っ張ってる感が……』
『ストップ、ストップ、ストップウウウウウウウウウウ!』
容赦ない。本当に容赦ない。
藍子がついに音を上げて、スマホの画面に必死で指を滑らせたのだった。
『そ、それ以上は……メールの添付ファイル読むんで、か、勘弁して、くださ、い……』
想像以上に、メッタメタのギッタギタにされてしまった。気分はジャイアンにボコボコにされているのび太だ。
トドメがこれである。
『わかった。まあ結論から言うと、一次落ちは妥当だろうな』
『……ソウデスカ』
厳しい。ほんとーに厳しい。
藍子はそのまま、テーブルに突っ伏して撃沈したのだった。
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