<14・ミリョク。>

1/4

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ

<14・ミリョク。>

 絶対的に面白くなる方法、とか。  確実に公募を通る方法、なんてものはないとわかっている。  大体そのへんの理論をマスターしたつもりでも、いざ自分で書いてみると盲目になって、マスターしたはずのことを見落としていたりもするものだ。自分の作品に愛着があればあるほど“これは面白いはずなんだ”なんてフィルターがかかってしまい、見えるはずのことが見えなくなってしまうからだ。 『あのねえ、このゲームで生き残れるのは一人だけなの。生き残りたかったら、他の参加者は全員殺さなきゃいけないの。最初にさ、あのお屋敷で運営サンに説明されたでしょうが。そのために、あたし達全員こうして武器を支給されてんのよ?あんただって、今その手に持ってる包丁はなんなの?』 『そ、それは身を護るために』 『そうでしょうよ。つまり、死にそうになったら自分を守るために人を殺そうってなわけ。じゃああたしと一緒。責められるいわれなんかないわ』 『い、一緒なんかじゃない!わたしは、できれば人なんか殺したくない。な、な、なんとかしてこの森から逃げ出す方法を……!』 『どうやって?この森の周辺は、みんなテロリストが見張ってるのよ?ワナだっていろいろあるって話じゃない。それを潜り抜けてどうやって脱出するつもり?大体、この場所携帯の電波も通じないから、ここがどこだかもわかんない。それでどうやっておうちに帰るつもりなんだか』 『そ、そんなこと言われても』 『ほらまた泣く、すーぐ泣く!お子様はそうやって泣けば解決すると思ってる。だからガキってのは嫌いなのよ!』 『う、うう、う』 ――“会話文が多すぎ、長すぎ。”……言われてみると、確かに。 『恵理子は怒鳴った。わたしは、どうすればいいのかわからなかった。  だってとても怖かった。殺されたくなんてなかった。脱出して生き残りたいと思うのが、そんなにおかしなことだなんて思えなかった。  座り込んだまま、ぐずぐずと鼻を鳴らしてしまう。どうして、出会う人で会う人みんなイジワルばかり言うのだろう?』 ――“過去形が重複しすぎ。言った、怒鳴った、みたいな行動ばかり書きすぎ。”……はい、仰る通りで。  ああ、本当にどうして自分で書いている時は気づくことができなかったのやら。  確かに、由梨が恵理子に襲われるシーンなんて、とにかく恵理子が矢継ぎ早に喋るものだからどこで会話を切ればいいかわからなかったのだ。下手に途中にト書きを入れると流れを切ってしまうような気がしたし、由梨が何かを思う隙も与えないほど怒鳴られたという印象であったのだから。  それに、未だにト書きに書くこと、というのがあまりよくわかっていない。状況描写をすればいいのはわかっているけれど、ブチギレている相手に対して“●●と言った、怒鳴った”以外に何をどう書けばいいのやらと思ってしまう。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加