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『あのねえ、このゲームで生き残れるのは一人だけなの。生き残りたかったら、他の参加者は全員殺さなきゃいけないの。最初にさ、あのお屋敷で運営サンに説明されたでしょうが。そのために、あたし達全員こうして武器を支給されてんのよ?あんただって、今その手に持ってる包丁はなんなの?』
これが、元々の原稿。
『あのさあ、ウロチョロウロチョロ、いい加減うっとおしーんですけどお?』
苛立ったように雑草を踏みしめながら現れた中年女性は、髪も乱れ、目をギラギラと血走らせていた。
大坂恵理子。
名札にはそんな名前が書かれている。いい加減うっとおしい――その言い方でわたしは気づいた。さっき、顔を見ることができなかった襲撃者。まさかこの女性がその正体だったというのか。てっきり男性に追いかけられたとばかり思っていたのに。
『いつまでもいつまでも逃げ回ってばーっかり。さっさと死んでくれなきゃ困るっていうか、あんた一人にいつまでも構ってらんないのよ。こっちは、一人でも多く、さっさと殺さなきゃいけないんだから!』
『な、なんでわたしなんですか!なんで、どうして!?』
納得がいかない。思わずそう声を上げて、自己嫌悪に陥った。
これではまるで、他の人なら殺してもいいと言っているようなものではないか。確かに生き残りたいのは事実。だけど自分が本当に嫌悪するべきは、己の生死ではなく殺し合いそのものだというのに。
『わ、わたし、あなたのことなんか知らない!このゲームで会ったばっかりで、なのにどうして殺されなきゃいけないのかわかりません!そ、それにいくらルールだからって、人を簡単に殺していいなんて、そんなことあるわけない……!』
後退りながらも言えば、はあ?と恵理子は顔を歪めて笑う。
『あんた、馬鹿じゃないの?ゲームのルール聞いてなかったわけえ?このゲームで生き残れるのは一人だけなの。あのねえ、このゲームで生き残れるのは一人だけなの。生き残りたかったら、他の参加者は全員殺さなきゃいけないの。最初にさ、あのお屋敷で運営サンに説明されたでしょうが』
これは当然の権利。そう主張するかのように、ナイフをひらひらと振りかざしてみせる。
その刃に赤い染みがあることに気付いて、わたしは言葉を失った。まさかもう、既に誰かを殺したあとだとでもいうのか、彼女は。
『そのために、あたし達全員こうして武器を支給されてんのよ?あんただって、今その手に持ってる包丁はなんなの?』
これが、帝が送ってきた修正案。
やや文字数が増えており、台詞も若干変更されている。しかし大きく展開が変わったわけでもないというのに、イメージが大きく異なるのは何故か。
理由はいくつもある。
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