<18・モクヒョウ。>

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「そして今回は、ひたすらホラー描写を濃厚にして、怖さを追求しようとも思ってて。主人公は普通の女子大生なんだけど、ゼミの仲間を助けるために一生懸命情報収集しようとする、というか。この間の作品と比べるとだいぶ勇敢で積極的に動く性格にしようかな、というか」  ロマンスファンタジーも人気はあるが、ホラーで求められているのは何もできない守られヒロインではないだろう。よくよく考えてみれば、自分で積極的に動かず流される主人公ほどつまらないものはないわけだから。以前の時の自分は、そんなシンプルなことがわかっていなかったように思う。  というか。  主人公が隠れて閉じこもっているうようなタイプでは、この手の話はまったく進まないと言っていい。何もしないまま怪異に襲われてあぼん、ほど退屈なものはあるまい。読者は事件の解決と同時に、ある程度の真相が明らかになることも望んでいる。そういう意味では、ミステリーとホラーは近しいものがあるのかもしれない。 「最終的には……できれば主人公は生き残る形にしたいけど、それ以外どうしようかなってまだ迷ってるんだよね。だってホラーだと、ご都合展開すぎるハッピーエンドって、下手なバッドエンドより嫌われる、んでしょ?」 「その通り。敵がただのサイコパス殺人鬼ならばともかく、怪異や邪神を相手に人間ができることなんて限られているわけだからな。そういうものを簡単に討伐できない、それでもどうにか逃れて立ち向かっていく姿に共感を覚える、そういうものだ」 「だから、場合によっては圧倒的な力の前に潰されてみんな死ぬのもやむなし、と」 「その方がリアリティがあって面白いケースもある。主人公が魅力的で好感度が高いと、できれば救われて欲しいと願う読者も増えるだろうけどな。……まあ、おいおいどういう結末がいいのかについては考えていけばいい。プロットを書いていく途中で変更してもいいわけだしな」  丁度そのタイミングで、ウェイトレスが注文していたアイスティーを持ってきてくれた。ガムシロップを入れつつ、帝は告げる。 「さて、では序盤から、時系列順に考えてみるか。恐怖と、恐怖ではないものとの落差。人が本気で怖いと思うもの、斬新だと感じるもの。ホラーってのは、想像以上に奥が深いものなんだぜ?」
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