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「女の子は、この村の神様に生贄に捧げられた人柱だったんだ。お母さん、って呼んでるのはその神様ね。お母さんって呼ばないと怒られるから、女の子は渋々本当のお母さんじゃないのにそう呼んでる、的な」
ちなみに、彼女が現代人っぽい服装で現れたのは、みんなを騙して人間のふりをするため、村の外へ連れていってもらうため――ということにでもすればいいと思っている。
流石にちょっと酔っぱらった大学生たちでも、こんな真夜中に着物姿の女の子が現れたら警戒したはずだ。ならば、あまりに現代人離れした格好で登場させるわけにはいかない。そのへんは、上手に調整をかけていく必要があるだろう。
「女の子も、既に神様みたいな存在なんだけど……村の守り神様と比べるとまだまだ力が弱い存在で。だから、本物のお母さんのところに帰りたいけど自分一人じゃ帰れないから、村の外から来た人に頼ってるってかんじで」
「何故村の外の人に頼るんだ?」
「それは……村の人は、騙されてくれないからだと思うよ。元々村の守り神様は、子供を守るために自ら人柱になった女性だから。彼女は自分で死んだはいいけど、結局我が子の命を災害かなんかで守れなくて……だから、彼女を慰めて力を保つために、大昔は女の子を生贄に捧げて安寧を守ってたんじゃないかな。守り神様にとっては、女の子は“本当の自分の子供”も同然の存在。ずっと腕の中で守っていたい。その子がどれだけ本当の母親の元に帰りたがっていたとしても関係ないんだ」
「なるほど。つまり、逃げ出した女の子を助けるということは……守り神様から子供を奪うも同然、と。だから村の人達は、彼女らしき存在が一人で泣いているのを見ても見て見ぬふりするしかないのか。関わったら、守り神様の怒りを買ってしまうから」
「そーゆーことです、ハイ」
滝登もアリサも他の者達も、彼女が人外だとは知らなかった。生きている人間だと思っていたからこそ、助けて交番に届けようとしたのだ。
だが、実際は“守り神の元から逃げ出してきた小さな神様”だった。
少女に協力したことで、ゼミのメンバーは全員守り神の祟りの対象となってしまったというわけである。そう気づいた町の巡査は、大慌てで全員に“さっさと村から逃げろ”と忠告したというわけだ。
「……なるほど、それがきっかけで、大学のメンバーが次々死んでいく惨事になる、というわけか」
紅茶にレモンを入れながら言う帝。
「質問しても?」
「どうぞ」
「村の人達は、守り神と少女の物語を知っていたんだよな?それで、少女を助けると呪われてしまうというのもわかっていたんだよな?なら、よそから来た大学メンバーに何故それを教えておかないんだ?」
「あ」
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