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幽霊も、知らないだけで存在すのかもしれない。
「ホラーはファンタジーと違って、現実に染み出してくるんだよね。じわじわ押し寄せてきて、知れば知るほど現実の自分にんも影響が出てきて。だからこそ怖くて、ドキドキして、リアルの自分も変えていってくれる気がして」
別の世界じゃない。
ここにいる、今の自分と関わりのある、ナニカ。
「そしてそんな恐怖と触れ合うからこそ、人は人とのつながりとか、絆を再確認できるんじゃないかとも思うんだ。ホラーは、他のジャンルで描きたいこともちゃんと描ける。人との対立、絆、決別、共感、愛情に憎悪に無関心に友情に家族愛。ホラーを通じて、人に伝えられることは多い。ドキドキわくわくしながら、子供達や若い世代の人達にも、読みやすく、楽しみながらいろいろなメッセージを伝えられるような気がするというか……すみません、なんか、脈絡なくなっちゃって」
ああ、文章で書くより、こうして口で伝える方が苦手だ。なんだか恥ずかしくなって、ちらりと彼の方を見る。
すると意外にも、帝は口をぽかん、と開けて固まっていたのだった。
「ど、どうしたの?なんか、変、かな?」
思わず尋ね返すと、いや、と帝は少し戸惑ったような顔で首を横に振った。
「驚いただけだ。俺と、そっくり同じことを思ってる人がいるもんだと思って」
「え」
「小学生の時な。実は、全然本読まない人間だったんだ、俺」
彼はちょっぴり苦笑いしながら言った。
「読書感想文ってあっただろ、夏休みの。あれがダイッキライで。本読んで感想文書かされっけど、そういう時読まされる本ってなんか……すごい偏ってるだろ?道徳的だったり、家族愛とか友愛とかそういうのを大事にする話みたいなのばっかり読まされるっていうか。大人になってからヒューマンドラマ読めるようになったけど、子供の頃はそういうのマジで苦手だった。何が面白いんだって思ってた。幼稚園の時から戦隊ヒーローが好きで、ようは怪人が襲ってきて戦ったり、不思議な出来事やハラハラする出来事が起きなきゃ物語なんか面白くないって思ってたっていうか?」
それは、わかるような気がする。
実際藍子も読書感想文は大の苦手だった。本を読むことそのものが苦手、というのとは少し違う。物語は好きなのに、活字となると読む気がしなかったのだ。何故ならば。
「大人は、本を読め、それで成長しろみたいなこと言うんだよねえ」
はは、と思わず笑う藍子。
「でもって、そういう時読め読め言う本って、結構堅苦しいジャンルっていうか。子供が読んで楽しい本とは違うんだよなあ。少なくとも私にとってはそうだった」
「そうそう」
うんうんうんうん、と何度も頷く帝。
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