<20・ワクワク。>

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「自分が好きなジャンルの話を読んで、マジ好きなように作文書いていいよって言われたらもっとみんな積極的にできると思うんだけど。実際は、大人は“子供の成長のために”読ませたい本ってのがあって、それ以外を求めてないことが多い。でもって頑張って感想書いたって、望んだ方向じゃなかったらケチつけてきやがるんだ。それで本が好きになるかって言ったら、そんなことないんだよなあ」  帝は語る。  小学生で初めてやった読書感想文。唯一面白くて読めそうだったのが、大好きな戦隊ヒーローの児童向けノベライズだった。先生は“どんな本でもいい”と言ってくれたので、自分は戦隊ヒーローの本を読んで感想を書こうと思ったらしい。  案の定、この本にします、と言った途端先生の顔色が変わったそうだ。  戦隊ヒーローが怪人とドッカンバッカン戦い、冒険を繰り広げるような話は――先生が望む“子供に読ませたい、成長を促すような話”ではなかったということなのだろう。 「ガッコの先生に、俺が読みたい本を提示たら、もう悉く却下されてさあ。戦隊ヒーローの本も駄目、電車の本も駄目、小林少年と少年探偵団も駄目と来やがった。先生がこれはどう?って言ってきた本……小学生の子供の初恋とか青春とか、引っ越すから友達と離れ離れになるのが嫌とか、喧嘩したとか。多分そういう内容だったと思うんだけど、もうタイトルも覚えてねえ。まったく面白いと思わなかったからなあ」 「ああ、うん、想像つく……。ようは道徳の教科書に載ってそうな話、だよね」 「で、面白くねえから正直に“面白くなかった”って書いて提出してやったら。先生に散々直されたあげく、面談で親に告げ口されるわけ。ほんとマジ勘弁しろって思ったよ。自由に感想書いていいって言ったのに、正直に面白くなかったって書いたら駄目なのかよってな」 「わかるう……」  青春とかヒューマンドラマとか、そういうジャンルが駄目なわけではないのだ。そういうものが面白いと思える子供は、それを読めばいい。でも、そう思えない少年少女に、面白くもなんともない本を読ませたって感想は“つまらなかった”の一言に尽きるのである。しかも最終的に、読書感想文で“面白かった!感銘を受けた!ここが良かった!”みたいな感想を強引に書かされるわけだ。子供からすれば、読書感想文そのものが苦痛でしかなくなってしまうだろう。  その結果、活字そのものが嫌いになってしまう子供は少なくないに違いない。  実際本当に苦手なのは本ではなく、そういった押し付けだというのに、だ。 「だから俺は、本が嫌いなんだと思ってた。面白くもなんともない、疲れるだけの代物だって。……小学三年生の時だったかな、そうじゃないって思うようになったのは」
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