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ゼミの先生が田中由美。年配のおっとりしたおばちゃんの教授だ。
他、ゼミのメンバーには静かで大人しい性格の藍沢颯太、賑やかな陽キャの藤森英二。それから女子に、ちょっとチャラい雰囲気の野島まりか、お嬢様然とした戸田香織が存在している。アリサ、滝登は主役だから終盤まで死ぬことがない。先生も序盤で死ぬポジションは外した方がいいだろう。
ということで、残る四人の中から順番に死んで行ってもらうことになるのだが。
「最初に死ぬ人間は、ホラーとかおばけに怯えなさそうな人がいい。何故なら、最初の死人の役目は“不吉なことが起きている”と皆に知らせる役目だからだ。本人がどのように死んだのか、何故死んだのか、ミステリーでいうところの謎解きのきっかけになるポジション。本人が怯えて慌てふためくところを見せる必要はない」
「私もそう思う。だから、あんまりパニックになさそうな颯太に死んでもらった方がいいのかなって。ただ、そのような死に方をしたら怖いのか、っていうのがあんまりわからなくって。極端にグロテスクな殺し方をすればいいってなもんでもないし……」
ホラー小説の相談とはいえ、結構ヤバい話をしているなとつい苦笑してしまう。
キャラクターを、どのように殺すか。どうすれば残った者達が怖がるか。――これを現実で考えるようになったら完全にサイコパスだろうが。
「残った者に恐怖を与える死に方、がいいとは思う」
ふむ、と顎に手を当てる帝。
「例えばそうだな。そんな場所で絶対に死ぬはずがないだろ、ってところで死んでいるとか。あるいは、ものすごく痛そうな死に方をしている、とか。……自分がもし死ぬ役目だったら、どのような死に方をしたくないか?それを考えてみるといいかもしれないな」
なるほど、と藍子はノートに目を落とした。
一番最初に死ぬ颯太は、彼の視点で物語を描写するつもりがない。誰も知られないまま、いつの間にか死んでいたことがわかり、その死にざまを見て皆が震えあがる――ということになるからだ。
裏を返せば、彼目線で“いかに恐ろしい殺され方をしたのか”を伝えることができないのである。ならば、死んだ後の姿だけ見ても恐ろしいとわかるような書き方をしなければいけない。
「……ちょっとグロいんですけど」
藍子はノートに、四角い箱を書いた。一応、エレベーターのつもりだ。
「颯太の死体は、アリサとゼミ仲間のまりかで見つける予定なんだよね。まりかが住んでる自宅マンションに遊びにいった帰り。まりかがエレベーターで一階までアリサを送ってくれるんだけど……そのエレベーターが一階に降りたところで、ぐちゃぐちゃぐちゃ、って変な音がするわけ。何、って思ってみたら……なんと、エレベーターのカゴの下で、颯太の死体が潰されてたっていう……」
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