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例えば一人目が死んだ時に、それが呪いかどうか、あるいは本当に事件や事故かどうか、身内で話し合うシーンを入れてもいいだろう。
なんなら、そこでひと悶着起こしてもいいかもしれない。
「……二人くらい死んだところで、仲間同士で揉めてもいいかも?」
緩急、のひとつ。
人間同士でトラブルになるシーン。
「例えば……ヤマビコ様に生贄に捧げられた少女、彼女を最初に助けると言い出したのは滝登だから。その滝登に詰め寄る人が出てもおかしくないと思うの。あんたがあの女の子を助けなければ、私達みんな巻き込まれなかったのに、あんたのせいよ!みたいな。……この役目は、ヘイトが溜まるからアリサにはさせられないし……チャラいキャラのまりかあたりにやさせるのが良さそうな気がするけど」
「……それなら、滝登が調査に乗り出すのも自然に動かせるかもな。滝登は責任感が強い、不言実行タイプのキャラだろう?自分のせいで仲間たちが犠牲になったと思ったら、責任を感じて呪いを解く方法を探そうと奔走しそうだな」
「うん。そして、滝登に片思いしているアリサも、それを助ける理由ができると思うんだよね」
面白い。彼と話しているだけで、どんどん話が組み上がっていく。
一人で書いているだけの時にはなかった手ごたえ、感覚。矛盾や、不自然なところをきちんと指摘して改善の手助けをしてくれる人がいることのなんとありがたいことか。
爽快感。
そう、子の間隔は、誰かに読んでもらうとか、受賞するとか、そういう以前にもっと根源的なものだろう。自分が望んだ物語を、自分の手で自由に組み上げられることの喜びとでもいうべきか。
――そうか。六条さんが、そういう方向に私を導いてくれてるんだ。
手を取って、優しくエスコートしてもらっているような。それでいて、分かれ道では藍子の意思を尊重してくれているとでもいうような。
――……なんて、楽しいんだろう。
この人がいてくれたから。
そう、この人が、いるからこそ、自分は――。
「ん?」
その時だ。スマホが特徴的なメロディーを鳴らした。最近変更したばかりの着信音。まるで魔法少女がステッキを振るかのような音。
LINEに新しいメッセージが送られてきた時の音だ。
――また広告かな。……え?
それを見た藍子は、目を見開いた。
送り主は、会社の後輩である一倉佳奈。
『先輩、ちょっといいですか?……偶然見ちゃったんです。その、先輩がトラブルになったっていう……星河エミナって作家さんのことなんですけど』
そこには、驚きの情報が書かれていたのだから。
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