巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

新生活と唐揚げの妖精

右手からは塩、左手からは砂糖。

そんな用途不明の加護になったのは俺が調理中に異世界に来てしまったせいなのか、それとも神様の悪ふざけなのか…。
まぁ、そもそも俺は脇役だ。期待はしていなかったしされてもない存在だ、これくらい地味な方がいい。
それに、こんな謎ばかりの異世界で生きていく上で、魔法の適性がないうえに加護もないよりは断然生きやすいだろうと前向きに考えているのに、

……困ったことに真里亜の心配性が止まらない。

『いま笑ったの誰ですか！？もしお兄ちゃんが不当な扱いされたらこんな異世界に絶対！一秒だって力を貸さないんだからバーカ！！』

真里亜は夜叉のように顔を歪め声を荒らげ、強気にも平凡な兄の容姿や魔法適正のなさ、ついでに使いどころもなさそうな加護を嘲笑う連中を一刀両断した。

……真里亜の気持ちを思えば、無理もない。
異世界なんて望んでもない場所に連れてこられて、妹はずっとピリピリしてるんだ。さらに唯一の肉親が馬鹿にされて気分がいいはずもない。

それでも不出来な兄貴にできるのは、まぁまぁと少しでも逆立つ心を落ち着かせる事だけ。

さらに…忘れちゃいけない。
今回のステータス鑑定で、真里亜は正真正銘の”聖女様”と認められた。

いつまでも兄と一緒ってわけにもいかず、聖女として今後の生活をする場所、教会が男性禁止と言われると今度は、「絶対に俺(兄)の作ったものしか食べない！！」と言い張ったのだ。