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この過酷なサバイバルを生き抜く
全員に警戒された。
まぁそうだよねぇ、この見た目じゃ白い粉で怪しさ満点だ。
なので俺は砂糖をお湯に溶かして自ら飲む。無害だと証明するために。
あぁ… この口の中に広がる優しくてほどよい甘さよ。器の鉄臭さを包み隠し、疲れ切った体を癒して……って、つい一気飲みしそうになった。
「甘くて美味しいよ?」
「甘いのか…?」
うんうんと必死に頷く。片言の異世界言葉でもコミュニケーションはとってきたんだ、とくに食事に関することは。
「お願いだ、誰か一人でいいから口をつけて欲しい」
真っ直ぐに差し出す器。
言った言葉も意味も伝わらなくていい、せめて懇願する俺の姿を理解しようとしてくれたなら…
俺は、彼らの素性なんて知らないけど、助けたいと心から思っている。
だって彼らは迷子の俺を見捨てなかった、この森の植物が毒だと教えてくれた。
なにより貴重な食糧を分け与えてくれたんだ。
そっと器を手に取ったのは隊長さんだったが、それを体格の一番いい男が静止させ、代わりにグイッと……
「ーーーーーー!!!」
この俺の一風変わった調味料体質(加護)は、限界だった状況に奇跡を起こした。
それからも俺はひたすらジェスチャーを繰り返して火を起こしてもらった。
少量の水だけでいい、あとは砂糖を入れてグツグツと煮込むと水飴とベッコウ飴の完成だ。つまり食料が出来たのだ。
「XXX…!!ありがとう!!」
「―――――っ、俺も、ありがとう、ありがとう!」
何度も何度も繰り返された感謝の言葉。
俺もオウム返しみたいになったけど、心の底から異世界の言葉で返した。
そして、砂糖だけじゃ足りない。
今の俺は突然現れた怪しい人間から、奇跡を起こした恩人となった。今がチャンスなんだ。
(俺は生き残る)
まだ続くであろうサバイバルにおいて、調味料を出せる俺を彼らは守ってくれる。少なくとも森を抜けるまでは絶対に。
………なら、加護の出し惜しみなんてしてられない。
「右手からは塩も作れますがどうですか、お兄さんたち?今なら安くしときますよ!?」
人間にはミネラルも必要だよね!?と塩を出した事で、彼らの顔色が変わった。
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