社会の窓を開けても常識は忘れるな

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社会の窓を開けても常識は忘れるな

開けた草原と流れる川を見つけた騎士一行だが、隊長さんだけは誰よりも冷静だった。 即時に動ける人とそうでない人を分けて、周囲の安全確認・探索チームと水質の確認(多分だけど魔物が住んでないか)・川魚を捕まえるチームに編成したのだった。 「後は………」 「あ、はいはい!俺、俺も何かしたい!出来ることはありませんか!?」 忘れられたら悲しいぞ!?って俺は必死で手を伸ばして猛アピールしたのに… 隊長さんを含む全員が「んんー」と悩ましげな表情をした。 えっ、俺役立たず!? 言われずとも戦力外だっとショックを受ける前に、隊長さんがそっと指さしたのはまだ動けないイーリエさんだ。 ”ここに残って彼を守ってほしい”。 「了解しました!!」 護衛任務にピシッと敬礼をした。 透き通った綺麗な水質に、川魚の住む川。 此処に問題などなかったらしい、魚の確保というか…久しぶりの水辺におっさん達はみんなはしゃいでいた。 むさ苦しいと思うのに今までの状況を考えれば天国だ。 「シオウ、」 「え、行きませんよ!俺にイーリエさんを任せてくれてるんだ、俺だってやれることはやるよ」 (消化にいい野菜か果物が欲しいのに、んん゛~~~~分からない………) 皆だって遊んでばかりじゃない。 俺に出来ることが限られた中、あぁだこうだと首を捻ってみたけど…………脇役には何もできなかった。 そのうち水魔法をたくさん使ってくれたルカルさんが、そろそろ交代しようと声をかけてくれた。  * * * (~~~~っっ、ちょっと冷たいけど気持ちい~…癒されるぅ) 鎧を脱ぎ捨てたおっさんたちが喜んで水遊びしている傍らで…のんびりだ。 ココは風呂じゃないんだけど、全裸になって体を清めたいのは日本人ならば分かるはず。 この世界にも温泉施設とかはあるんだろうか?いいな、行ってみたいな…… 「し、シオウ!?」 「ふぇ!?え、なに!?」 びくんっと俺を見て過剰な反応を見せたのは通りがかった青年。 ――――?誰だ、この格好いい人?? 亜麻色の髪色に薄緑色の瞳、こんな特徴的な美丈夫なんていたっけ? いや… 俺が知らない顔があって当然だ。いくら俺がちょっと親しくなっても隊長さんを含め、常に兜で顔を隠している騎士は四人いた。 「XXX 、!?XXX、XXXX!!」 「え、ちょ、まって!早口は無理です!」 どうしてしまったのか、美丈夫さんは片手で目を隠して俺を叱る。 ―――けど、うん…?………この声…?? いつも鎧のせいでくぐもった声だったからピンとこなかったけど、その瞳の色…、 まさか、隊長さんなのか!? え!思ってたより断然若いんだが!? 「いやいや!でも、なんで覗いた側がそんな乙女な反応するの!別に」 「……っ、XX。あれ、見て」 「?あれ、って…??」 チラッと見ると相変わらず楽しそうに水浴びしているおっさんらがいた。 そして隊長さんは指を少し下げた、うん。みんなズボンか下着は―――穿いている。 「シオウ、ダメだ」 「……ごめんなさい、嬉しかったのでつい…」 もしかしなくとも、パンツを穿いてないのって非常識だったらしい。 「……マナー知らずの不埒な者で、すみませんでした」 「違う…っ、XXXXX、危ない」 「はい…確かにポロリはダメだ、危ないデスヨネ…」 お互いニュアンスでの会話だけど、空気でなんとなく通じてしまうのが心苦しい。 しゅん…と反省した俺を許してくれたらしい。 俺のパンツも服も、全部洗って近くの木の枝に干してたのを風魔法で乾かしてくれた。 「――!!隊長さんも魔法が使えたんだ!ありがとうございます!!」 「――――は!?シオウ!?」 そしてパンツをしっかり履くと、再び水の中に入る俺。 「せっかくだもん、遊びたいし交流しないと!」 そう!せっかくなんだ、そろそろ水遊びに混ぜてもらいたい。 それに……一番体格のいいゴルディさんにお願いして俺の体を水ん中に放り投げてもらえないかな!?絶対楽しいはずだ。 (やっぱり恩は売っといてよかった…!!俺、変態にならずに済んだよ爺ちゃん!!) 日本とは違うけど、郷に入っては郷に従えだ。 いつだって常識は忘れてはいけない。 しかし、おーい!と俺が手を振りながら走っていくと全員が「キャー――!!!」と悲鳴を声を上げた。
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