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シュヴァル国 王都第二騎士団
???サイド
””法国マクミランが、聖女様降臨の義を行い成功した。””
それは数週間前、シュヴァル国の王座の間を震撼させた偵察部隊からの知らせだった。
「おぉ…なんということか…」
王の落胆した声を聞いた護衛騎士達は俯き、それぞれ違った想いがあっても静かに王の言葉を待った。
聖女を降臨させたマクミランと隣国シュヴァルは、元は同盟国で協力関係にもあった。しかし60年前、聖女を巡り起きた戦争により今は休戦中の敵国同士。
―――そのマクミランが、再び聖女を呼び出したのだ。
穏やかでいられる者は誰一人としていなかった。
「己れ、マクミランめッ!それに星の神々も何を考えている!?」
玉座の隣に控えていた第一王子アルベルト。
苦虫を噛み潰したような顔を浮かべ、握った拳は激しい怒りに震えていた。
「よせ、アルベルト。……皆の者も、今は決して公にしてはならぬ。事実を確かめ、マクミランの出方を探る」
王は玉座から立ち上がり、凛々しく毅然した姿勢で振る舞う。
前の聖女が消失してから150年―――今やどこの国も土地に溢れる瘴気に頭を悩ませ抱えている。
シュヴァルにとっても聖女の存在は待ち焦がれる存在ではあった。
それでもまだ国は覚えている。争いを繰り返してはならぬと
「これより王名を下す―――――」
王がマクミラン法王に手紙を出し、マクミラン側も聖女の否定はせず、中立地区で聖女様と司教との会談の場を設けると返事が届いたのだ。
そして王都第二騎士団は隣国へと馬を走らせた。
手紙の様子からして敵意はなく、むしろ聖女と会わせるなど友好的であるが油断は禁物だ。
それともう一つ。降臨が事実ならばマクミラン以外、他国の瘴気をどう考えているのか… それを知らねばならない。
知らねばならなかったのだが……
ーーーーオオオォ、オオオオ!!!!!
防具がなければ雄叫びだけで人間の素肌を裂く雄叫び。魔法は無効化され、溶ける体の血は石すら溶かそうとするほどの強い酸と毒。
「嵌められたな…」
中立地区で騎士らを待ち受けていたのは、聖女でも司教でもなく高位の魔法使い達だった。
彼らは騎士達が到着するより先に全ての準備を済ませていた、あとは腰から抜かれた銀色の剣が、あと一歩で剣先が自分達の喉を切り裂く前にーー… ニィっと口元を歪ませ、大掛かりな転移魔法を発動させるだけで良かった。
転移の先は、死の森の最深部。
そこで騎士達を待っていたのは、生き物の住めぬ森で死してもなお動き続ける骸の巨龍。
ドラゴンゾンビによる不意打ちと襲撃だった。
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