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加護はまさかの―――
それからも、なかなか大変だった。
「真里亜、大丈夫だ。彼らを見てみろ?敵意はないだろ?」
「誘拐犯の肩を持つの…?」
「まさか!」
もっと落ち着いた場所で説明を求めたところ、俺たちは礼拝堂から広くて豪華な応接室に案内された。
そこで真里亜は司祭と名乗る人物から、この異世界召喚の目的を教えてもらった。
この国で魔物を活性化させ、人に害を与える瘴気と呼ばれる”禍い”の存在。
それを唯一浄化できる聖女様として星の神様に選ばれたのが、俺の妹"真里亜"だったというわけだ。
―――しかし、その聖女様は大変憤慨していらした。
「この人たち、嫌い」
「俺も好きじゃない。でも……ここは日本じゃない、たぶん地球ですらないと思う」
でも言葉が通じるんなら、半信半疑でも受け入れなくちゃ状況の整理も理解もできない。
それに彼らの話しが噓か本当かよりも、いま優先するべきは身の安全だ。真里亜だってそれが分からない子じゃない。
「なにがあっても兄ちゃんが真里亜を守る。だから、まず彼らの話に耳を傾けてくれ。とても困ってるみたいだしさ?」
「…………ふっ。何処に行っても、お兄ちゃんはお人よしだね」
「いくらでも人を助けて恩を売っておけって、爺ちゃんの好きな言葉だったから」
くすっと妹が笑ってくれて俺も肩の力が抜けた、少しだけど。
例え私利私欲でも、彼らなりの目的があって”聖女様”の存在を必要としているのなら、今のところ安全のはずだ。
もどかしいけど俺に出来るのは、前向きに妹を励ますことだけだった。
「でも、お兄ちゃんと兄妹なのかって疑われたのは恨むんだもん」
「はは……」
それは無理だろうよ、妹よ。
並んでも疑われるのはしょうがない。とにかく妹は美人で可憐なのだ。
幼い頃からモデルをやってて、近いうちにアイドルか芸能界デビューもできるくらいの素質と演技力も備わっている。
それだけじゃなくて、小・中と常にトップの成績、運動神経もいい。
俺は…………言わせんな、平々凡々で目立ったスキルも能力もない20歳だ。恋人ナシ、童貞の…
とにかく!!
真里亜は目に入れても痛くない自慢の妹なのだ。
だからー――― 俺は俺に出来る最善を尽くすつもりだった。
そして後日。
コレは適正試験と言えばいいのか?
水晶に手をかざすと自分のステータスや属性が見えるという、鑑定的なことをやらされた。
「おぉ!!!」
湧きあがった周囲の歓声に、妹が紛うことなき聖女様だと分かった。
まぁ肝心の主人公、真里亜はすっごく不服そうにしてるが……きちんと”光の聖女様”と分かりやすい属性の加護が与えられていたようだ。
それが、この国を蝕む瘴気を浄化できる加護。
(ん?なんか、引っかかるような…?)
「次!お兄ちゃんの番だよ」
「えぇ~?俺はいいって、どうせしょぼいって」
「そんなわけない!お兄ちゃんなら絶対、すごい属性か加護を持ってるって!」
妹よ、その自信はどこからくるんだい?
けどずいっと差し出された透明の水晶。
異世界から来たんだから、一応俺も見ておけってことだろ。
力を水晶にこめるってイマイチ分かんないけど、両手に手をかざすとぱぁっと暖かい光が……
【…………うま】
は???う、馬???
誰かの声を聞いた気がするけど、こんな場所(異世界)で霊的なものが見えるようになったなんて… 怖すぎて無理。
「……えぇっと数値がでたけど、これってどのレベルなんだ?」
「ん-っと、普通だって」
「ですよねぇ」
「あ、でもちゃんと加護あるよ!やったね!!」
さすがお兄ちゃん!!と笑うけど、もう周りの連中は哂ってんよ。
心の中でイメージすれば出てくる。
俺は与えられたのは、右手からは塩、左手からは砂糖を生成できる加護だった。
ちなみに魔法の適正はない、ゼロだ。
「………」
なお、俺の作った料理を食べてもバフの効果はない。ただお腹が普通に満たされるだけ。
純粋な塩と砂糖。
純粋な塩と砂糖って、なんですか……?
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