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落騎士一行とエンカウント
一体、どれくらいの距離を歩いたんだろ…………
「ほんと立派だけど、君たち何百歳なの?」
返事などあるものか相手は樹木だ。
台所にはいたけど森の妖精はいないのか…と、しょんぼり落ちる肩。
高い樹木たちは立派な枝をこれでもかと天高く伸ばし、生やした緑色の葉は空の光を覆い隠す。そのせいで森全体が鬱蒼としていて、どっちに行っても正しい方角などない気がした。
【時間の感覚がない】.
恐怖にゾクっと鳥肌が立つ。
そもそも、ここはまだあの国なのか?
仕組みは謎だが、この異世界には異世界(日本)から人間二人を誘拐できる魔法技術がある。あれを応用できるのなら誰にも気付かれず、どこぞの山奥に兄だけをポイ捨てするくらい出来るだろ。
(……おれ、恨まれるようなことした覚えないのに…)
ダメだ、心細いと弱気になってしまう。
ぶんぶんと頭を振って、いったんこの場から動くことにした。
ざっ、ざっ…
足音は俺の一つだけ。
不気味なことに、こんなに緑に溢れているのに鳥の鳴き一つない。野生動物と遭遇することもない。あるのは静けさと、どこを歩いても似た景色。
せめて川を見つけられたらと思うのに………… 完全に俺を遭難させるのが誘拐犯の目的だったのか。陰湿すぎる。
?
体感にして一時間くらい歩いたところで、足を止めた。
(なんだ、向こうで何か、光ったような気がする……?)
それは気のせいではなかった。少し離れた先でキラッ、チカッと僅かな太陽の光に反射する物体がある。
そろそろ余計な体力を消耗しない方がいいと思うが、気にはなる。
ゆっくりと光を追うように近づけば、それは
ひ、人だ―――!
(…………!)
しかし助けを求めるよりも先にパシッと口を手で覆い、木の陰に隠れた。
な、なんだ…………?
俺が遭遇したのは森に住まうエルフでも山賊でもない。
銀色の鎧を着た一四か一五人ほどの大人達が、ぐったりとしている現場だった。
返り血に汚れた鎧、地面に寝かせられた重症者らしき人、頭に鎧を被っていない何人かは生気の失せた顔色をしているが、腰には鞘に納めた剣がある。
どうやらチカチカ光っていたのは太陽の光に反射していた剣か鎧だった。
「ーーーーっ、」
バクバクと冷え切った心臓がうるさい。
偽物だと思いたいけどあんな…、本物の剣に突き刺されてみろ、確実に死ぬ。
ゆっくり、ゆっくりと… 後ずさる腰。
「xxx、…xxx…」
「あぁ、…、」
何を話してるのか分からないけど、幸いな事に休憩中の彼らは俺に気づいていない。
(落武者なのか…?風貌は騎士っぽいけど)
いやいや、単なる和か洋の違いだ。
声をかけるのは避けた方がいい、絶対に
ーーー落ち着け、いったん離れよう… 慎重に、おち、
パキッ、
踏んだ枯れ枝が音を立てた。
(……俺の、ばか)
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