61人が本棚に入れています
本棚に追加
死の森
.
「XXX、XXXX!」
「わぁ、ごめんなさい!ほんと俺、怪しいモノじゃないんですって!!」
「よせ、XXXX…」
興奮する仲間を、頭の鎧の上から尾長の青い羽根をつけた人が落ち着かせてくれた。
他の騎士にはそれがないから、おそらくこの人がリーダーか、それに近いポジションなんだと思う。
「ごめんなさい…本当…俺も、どうしてここにいるのか知らないんだ」
いくら問い詰められられたって分からない、伝わらない。
うっうっ…、一体どうしたらいいんだ??
幸い騎士達は、俺を縄で拘束しただけで斬り捨てることも、剣を見せて脅してくるようなことはしなかった。しかし樹海のような場所を歩くには軽装で、武器も所持していない地味な男を怪しいと思わないはずもない。
放置されなかったのはありがたい。
俺は手を拘束された状態で彼らに連行されることとなった。
「XXX、XXX?」
「えっと、ほんとうにすみません……」
あぁ、またがっかりさせてしまった……。
彼らと共に移動してしばらく。どうして俺を生かしてくれたのか分かった。
それは……
「―――クソッ、まただ!!!」
「XXX、XXX…っ、!!!」
"またここに戻ってきてしまった!!"
大樹の幹につけられた剣傷をみて、何人もの騎士が絶望の声を上げた。
「……っ、」
たぶん彼等も俺と同じか、もしくは似た境遇だったのだ。
そして、同じ場所に辿り着いたのが三度目になれば俺にだって分かる。
ここは深い迷路のような森だ……。
「…………」
「………、………」
まただ、もういやだ…。出口のない状況に、全員の気力が叩き折られた。地面に崩れ泣き喚く騎士に傷口が痛み横たわる騎士と…絶望に暮れる様子はまさに地獄絵図で、俺もじんじんと歩き疲れる足を見た。
そして今日は歩くことをやめたのか、隊長さんが何か指示を出した。
(魔法って凄いな…。けど…)
離れたところに腰を降ろして様子を見る。
彼等は魔法で水と火でお湯を作り、器用にも鎧を加工して作った器に注ぐと全員に配った。
ただの水分補給ではない。あれが……おそらく彼等の食事なのだ。
「ほら、君も」
「えっ、え……?」
目の前に差し出された器に、固まった。
隊長さんは俺の縄を解いて施しを与えてくれたのだ。
「あ…、ありがとうございます」
”いいさ、別に。”
そう返された気がする、とても固く、元気のない声で…。
最初のコメントを投稿しよう!