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(この人たちは、いつからここにいるんだ…?)
よく見れば立派に見えていた剣も鎧も皆んなボロボロだった。
こんな過酷な状況でも魔法を使えば体力も減る。この騎士達の中で貴重な水と火を使える人間が倒れたら終わりだろうに…
「……っ」
ちゃぷんとお湯の中に浮かぶ俺の顔を見たとき、キュッと強く心を引き締めた。
「ねぇ、この草とかは食べられないのか?」
「あ?」
俺は落ちていた葉と草を指差し、そのあとに自分の口を交互に指さした。
この森の植物は、食べられないのか??とジェスチャーで聞いてみたのだ。
すると鎧を脱いでいた一人の騎士がふっと鼻で笑い、首をシャッと切るようなジェスチャーを返してくれた。
………よかった、共通の合図で。
彼らがお湯しか口をつけないのは知識がないわけじゃない。この森に生息している植物の大半が何かしらの毒を持っている。
だから生き物が住めない。天敵のいない木だけがすくすくと異常なまで成長したのだ。
「いただきます」
手を合わせて有り難くすすったお湯も、金属の味がする。
「…………ん?味…………?」
ここで俺は思い出した、一度も使ったことのない自分に与えられた変な加護の事を。
「あ、あの…! こ、これ!お礼にどうぞ!!」
パァと左の手のひらから出した生成したのは、砂糖だった。
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【死の森】。
瘴気を受けて育った深い樹海は一度でも足を踏み入れた者を逃がさない。同じような景色は人を迷わせ、狂わせ、死ぬまで生者をさ迷わせる。
さらに植物は強い毒性を持ち、摂取すれば激しい苦痛からの死が訪れる。
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