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大好きな婚約者が聖女様に誑かされてしまいそうです!
おい、ちょっと待て。
第一騎士団へ、注文を受けた回復薬を届けに来たフィーナは思った。
ジークハルトの隣りで微笑むキラキラの美女。そして、デレデレとそれを取り囲む団員達。
ピクピクと顳顬が痙攣しているのは、思いの外重い、荷物の入った段ボールのせいだけではない。
急ぎの発注だと聞いたのに、ちっとも取りに来ないから届けに来てやったんじゃないか。まぁ、ジークハルト様に会えるかもという下心が無いと言ったら嘘になるけど。
ぷるぷると震える膝。これも勿論、以下同文。
ドカッ!!
フィーナはわざと音を立てて、段ボールを床に置いた。流石に何人かがこちらを振り向く。
あー、重かった。こんなことなら、慣れないことなんかするんじゃなかった。
「ご注文の品、お届けしましたー 」
フィーナはそう言うと踵を返す。あんな、鼻の下を伸ばした婚約者の顔なんてみたくない。
「納品書のサインは、後で取りにきまー…… 」
「フィーナッ!!」
さっさとこの場を立ち去りたかったのに、言葉を被せてジークハルトが駆け寄ってくる。
ーーーばか。今更気付いたって許さないんだから。
無視して足を速めようとした瞬間、後ろから抱きしめられ拘束された。
「ちょっ?! ロートレッド団長? 」
「どうしたんだ? ここに来るなんて、珍しいじゃないか 」
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