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その近くで片づけを進めながら、私は聞いた。
「ねぇ、何を祈ったのお父さん?」
「お子さんの苦難は、レイヴさんの生まれ故郷からはじまっていそうだろう? だからそちらにお祓いして、お子さんには家内安全や健康祈願とか、よくある内容をたっぷりと……」
「だからあんなに長かったんだ」
でも実際のところは、気休めだからね。父はそう呟いて、肩をすくめた。
そうだ。スレィアニアの星の時間は、まだ動いているはずだ。
レイヴさんは、間に合うんだろうか。立ち上がったレイヴさんが、こうしちゃいられない、と私の横を駆け抜ける。
「大丈夫ですか!?」
「すぐに星に帰ります! ありがとう。なんだか、勇気が出てきた!」
彼は笑った。紫色の虹彩は、まるで日が沈み切った夕暮れのように、濃くて美しい。
「どれだけ時間が延びたかは分からないけど、おかげで頭がすっきりした。よし……では、これはお気持ちですが」
ドサンッ!と大きな音を立てて札束がおかれる。
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