紫の目の依頼

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「先に行ったように、スレィアニアの星では生きる時間が決められています。それは星のためであり、皆のためです。ですが……地球で産まれることになるであろうあの子にも、生きる時間が定められてしまうとしたら? スレィアニアの星の勝手が、私が愛した人に降り注ぐなんて、そんなことはあり得てほしくない!」  紫色の虹彩に力を込めて、レイヴは言う。彼の頬は赤く上気し、興奮しているのが伺えた。 「地球に居るなら、どれほど長生きできるのか……その演算を、今、スレィアニア星にあるもっとも質の良い演算器で計算し続けています。地球に居れば、確かに私の寿命は延びます。ですがその演算の結果を知るには、私が星に帰り、演算器を動かし続けなくてはなりません!」  背を伸ばす彼の身体が、人間とは異なる形状を取り始めた。手足は縮み、頭部は伸び、明らかに見たことのない異形へ変形しようとする。  しかし不思議と、香苗は恐ろしいとは思わなかった。 「この演算は、誰にも頼めません。私が知りたいことであり、星に住む仲間たちにはまるで興味がないどころか、怒り狂うような内容なんです。彼らはスレィアニアの星にある情報が、不当に地球へもたらされたと思うでしょう! せめて私は、わたしは。これから産まれてくるあの子に、未来はもっと続くのだと伝えたいのです……!」  するとそこへ、香苗の父が戻ってきた。出先にいっていたときの服装ではなく、神主としての正装をしている。
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