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「お待たせいたしました、レイヴさん。話の全てに『わかった』とは申し上げられませんが……」
香苗はすぐに察した。父は、レイヴへ、出来る限りの対応をするつもりなのだ。
しかし服装の違いからそう読み解けるのは、香苗が神社の娘だからだ。事情が分からないレイヴは、身を投げ出すようにして父親の前に這いつくばった。
「お願いいたします。私がどれほど、私の大切な人と一緒に過ごしたいと思っていても、その時間には限りがある。星に帰れば、規定時間が来た瞬間、私は私ではいられなくなる! そして私が地球へ情報を送り出しても、無事に情報が届くには3年はかかるのです。だから……だから! どうか! 寿命を延ばす祈りを……!」
レイヴの肩に、香苗の父が両手を置いた。
「顔をお上げくださいませ。この神社の神主として、引き受けさせていただきます」
レイヴがほっとしたように微笑む。
「ありがとうございます! ありがとうございます……!」
涙を浮かべて喜ぶ彼を見て、香苗も嬉しくなった。
自然と笑顔になり、父を見上げる。父はそんな香苗の頭を撫で、そしてレイヴの傍で優しく語りかけた。
「ただ。貴方に祈るわけではありません」
「……私ではない?」
「これから産まれてくるであろうお子さんのあらゆる苦難を祓うための、厄祓をいたしましょう。貴方のお子さんが安全に過ごしていけるように」
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