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金色の彼女 10
目の前の物体をしばらく見つめてから、私はふたたび集中し、両手に力をこめる。
そうして元の藤野香織の半分の長さになったそれを、おばあちゃんから伝えられた通りに、こねて、伸ばして、こねて、伸ばして、と繰り返した。
藤野香織だったものは柔らかく、自在に形が変わった。藤野香織のどこかの部位だった箇所が、私の手のなかで自由に形成されていった。
途中、背後から振動音が聞こえた。おそらくは、藤野香織のスマホだと思われた。しかし私には関係がないことだったので、後でスマホを処分しなければ、とだけ考え、作業を続けた。
こねて、伸ばして、こねて、伸ばす。
かいた汗が体温を下げ、冷えてきた体を懸命に動かした。
こねて、伸ばして、こねて、伸ばす。
おばあちゃんのことを思い、私たちの未来を思いながら、目の前の物体に体重をかけ、イメージと重ね合わせていく。
こねて、伸ばし、こねて、伸ばし。
こねて、伸ばし、こねて、伸ばした、その結果。
(…………やった!)
藤野香織だった物体が、突如として金色に輝いた。
おばあちゃんから聞いていた通りに、きらめき、発光したそれは、たしかな存在感で周囲を金色に照らしていた。
喜びに震える手で物体を少しちぎり、手のひらに乗せ、眺める。
温かく、見ているだけで安心する光だった。
生命が詰まっているような、涙が出るくらいに優しい物体だった。
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