金色の彼女 2

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金色の彼女 2

「そういえばさっき、なにを考えていたの?」  そうして雑談をしながら歩いていると、藤野香織が無垢なトーンで尋ねてきた。 「昨日観た、ドキュメンタリーのことを考えていたんだよ」と答えた。彼女が小首をかしげた。 「ドキュメンタリー? なんの?」 「害獣を駆除する、猟師さんのドキュメンタリー。動画サイトのおすすめに、たまたま出てきてさ。面白かったよ」  へえ……とうなずく彼女。私は簡潔に、その動画の説明をはじめる。  それは、八十歳を越えた現役猟師に密着したドキュメンタリーだった。畑を荒らすイノシシや鹿の捕獲を依頼されて動き、罠をしかけ、駆除する様を撮影していた。  獣を捕らえた際には猟銃にてとどめを刺し、解体して食肉にし、親しい人々と分け合って食べる。そうした猟師の生き様が、長期間にわたって記録されている映像だった。  説明を終えると、藤野香織が少しおびえたように言う。 「そ、そうなんだ。でも、なんだかちょっと怖いね」 「たしかに、残酷な部分もあるね」と猟師が死んだイノシシを逆さ吊りにしていた光景を思い出しながら、私は答えた。 「でも、いいドキュメンタリーだったよ。その猟師さんはね、楽しくてやってるわけじゃない、畑を荒らされて困ってる人のためにやってるだけなんだ、って言ってた。罠にかかった動物のことは、かわいそうだと思う。だから命を粗末にしないために美味しく食べる、それが供養になるんだ、とも言ってたかな。そういうところにさ、すごく共感できたんだよね。見てよかったと思うよ」 「はあ……すごいねえ」藤野香織は感心したように声を漏らす。おそらくは、本心から。熱をこめて話しすぎたかな、と私は思う。藤野香織が、のんびりとした口調で続ける。 「でも、私はやっぱり怖くて観れないかも。美香ちゃんは、そういうの怖くないの?」 「うん、まあ」と私はうなずく。「平気かな。慣れてるし」 「はあ……そうなんだ。すごいね。美香ちゃんは、強いんだね」  そう言うと、藤野香織はにこりと人懐っこく微笑んだ。  別に、強いわけではないのだけれど。そう思ったけれど、否定することでもないので、そうかなあ、と適当に返事をした。
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