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金色の彼女 7
またある時は、こうも教えてくれた。
家の裏庭。敷かれたブルーシート。私たちの足元にはバラバラの塊があり、ブルーシートの上には、さっきまで生きて話していたその塊が流した赤い体液が広がっていた。
右手に塊のひと欠片を持ち、口の端から血を垂らしながら、おばあちゃんが言った。とても、活き活きと。
「美香ちゃん、このお肉もいいけどね。本当にすごい人は、このご飯を変えることができるの。力を使って、獲物を『金色のもの』に変えることができるのよ。金色のそれはね、口にすると、元気がいっぱいになると伝えられているの。おばあちゃんは、やり方しか知らないけれど。素質のある美香ちゃんなら、もしかしたらできるのかもしれないね」
──その方法はね、その材料はね、
そうやって、おばあちゃんが教えてくれた方法を、私はずっと記憶している。
教えてくれた材料を、私は脳裏に刻みこんでいた。
「その材料はね、優しい人。理由や、原理はわからない。でも善良で、疑うことを知らない人。心の底から優しい人を『金色のもの』に変えられると言われているの。それは私たちにとって、最高のごちそうになるんだって」
私は、藤野香織を犠牲にしなければならないと思った。おばあちゃんのために。
善良で、繊細で、疑うことを知らない。臆病で優しい、かわいそうな彼女を。
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