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 覡組は法に触れないギリギリの事をしている組織とでも言えばいいだろうか。  それ故に人との繋がりはとにかく沢山ある。  人見金融をはじめ、キャバクラ、ホスト、風俗店などとも繋がりがあり、俺の仕事は金貸しや取り立て、夜の店の経営状況の把握や見回りなんかが主で、後はその都度瑛一さんから指示された事をやっている。  組に加入するまでは毎日何となく過ごしてる感じだったけど、今はそれなりにやり甲斐を感じている事もあって、そこそこ充実した日々を過ごしていると思う。 「お疲れ様っす」  マンションから車を走らせる事、約三十分。繁華街から少し離れた住宅地の一角にある三階建てのビルに着いた俺は中へ入り、二階にある事務所のドアを開けた。 「翅、待ってたぞ」 「何かあったんすか?」 「ああ、お前抜きで加波(かなみ)吾妻(あずま)仲原(なかはら)の元へ取り立てにやったら、アイツらヘマしやがった」 「マジっすか……。で、アイツらは今どこに?」 「そりゃ、見つけるまで探させるしかねぇだろ? つーわけで、お前も捜索に加われ。仲原はとにかく悪質だ。これ以上野放しにはしておけねぇからな。何としてでも見つけて人見ン所へ連れて行け」 「分かりました」 「で、お前が取り立てに行かなかったのは戸部の借金を肩代わりする事になったっていう女絡みか?」 「……はい。戸部の女ってのが、俺の幼馴染みだったんすよ」 「幼馴染み……ねぇ。お前にしちゃ珍しいよな、そんな事で情けをかけるのは。しかも5000万を肩代わりときた。俺には真似出来ねぇな。幼馴染みって以外にも何かあるんじゃねぇのか?」 「…………別に、最近退屈してたし、金は有り余ってるからいっそ女囲うのも良いかって思ってて、それなら知らない女より知ってる女の方が扱い易いって思った……ただ、それだけっすよ」 「ま、そういう事にしといてやる。とにかく今は仲原の事だ。お前なら見つけ出せるだろ? 頼むぞ」 「はい」  話を終えた俺は事務所を後にすると、既に男の捜索を始めている加波と吾妻に連絡を取った。
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