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一瞬、これは夢なんじゃないかって、思った。
いや、思いたかったのかもしれない。
「5000万、きっちり支払って貰う」
だって、
5000万円だよ?
そんなお金、どこにあるの?
普通の人間が、すぐに返せる額じゃないし、
そもそも、こんな借金を残して消えた彼は、何処へ行ったの?
男運の無さもここまで来ると、正直笑えない。
「……私、そんな大金……持ってません」
こんな事を言って逃れられるなんて思ってないけど、でも、同じ人間なら、勝手に連帯保証人にされて困っている人間に、
少しくらいは同情してくれてもいいじゃない?
しかも彼は、久しぶりに再会した幼馴染みなのだから。
だけど……、
彼はもはや、私の知ってる彼じゃない。
「だから何だよ? 見逃してくれとでも言うのか? 甘いよ、お前。俺は昔馴染みだからって、情けを掛けたりはしねぇんだよ」
あの頃の面影なんて、一つもない。
「来いよ、返せないなら、身体で払うしかねぇだろ?」
この人は、
人の皮を被った――悪魔だ。
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