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中学1年の頃、出会った男がいた。
そいつの名前は南直樹。
顔は整っていて身長も高くて、気も強い。その頃から直樹は、上級生にも負けないくらい喧嘩も強かった。
俺と違っていつもポーカーフェイスで、クールで冷静沈着で……遊びに誘われても、そいつだけは輪に入ってこなかった。
そんな俺とは正反対の直樹と、どうしてか俺はよく一緒にいた。趣味が合う訳でも、特別気が合うわけでもなかったと思う。
ただ一緒にいて気を使わなかったというか、一緒にいるのが楽だったというか。俗に言う、フィーリングが合う、というやつだったのだろうか。
直樹と一緒に過ごしていくうちに……ごく自然に、そうするのが当たり前だったかのように、俺たちは友達という関係から、恋人同士になっていた。
男同士という違和感もなく、本当に自然にだ。
学校では普通に振る舞い、2人きりになったらキスもしたしハグもした。そしてそれ以上も。
幸せってこういうことを言うのだろうと、若いながらに思っていた。
ーーーだけど。
中学3年2月。
無事高校受験に合格し、同じ高校に入学を控えていた俺たちに、悲劇が起きた。
「白川! 南が……」
「は?」
直樹は、学校の階段から落ちて、死んだ。
頭の打ちどころが悪かったらしい。
直樹が死んだって聞いた時、現実なのか夢なのか、自分が死んでるのか生きてるのかすらもわからなかった。
葬式でもう目を開けてくれない直樹の眠っているだけのような直樹を見た時、俺は死んだという事実を受け止めることができなかった。
今思えば、直樹が死んだ時から全て、始まっていた。
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