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「あ~あ、やってらんねえ」
いくら真夜中まで自室(と言っても庭のプレハブだけど)で机に向かっていても、勉強は一向に捗らない。気分転換も、受験生の焦りがあるからうまく行かない。鬱々とした気分で机に突っ伏していると、つんつん、とシャツが引っ張られるような感触を覚えた。
「ん?」
振り向いたけど、当然、誰もいない。そりゃそうだ気のせいだよな、そう思って再び机に向かうと、再び、つんつん、と引っ張られる感覚。
振り向く。誰もいない。正面を向く。つんつん。もうめんどい、振り向かずにいると。
つんつん、つんつん、つんつん、つんつん。
立て続けに引っ張られて、いい加減苛ついて、ばっと振り向く。やっぱり、誰もいない。まあ、いるわけないか。と、思ったそのとき。
「こっちじゃこっち、下のほう」
という声がして、視線を下に落とすと、
「うっわぁあ!」
「ひゃあ!!」
幼稚園児くらいの男の子が、俺の大声に驚いて、ぺたんと尻もちをついていた。
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