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何も全部戻さなくても、という2人のブーイングに、“お師匠様“は、それはできません、本来あるべき状況ではなかったのですから、と宥めるように言った。
次いで、“弟子”に目を向け、この落とし前は、しっかりつけてもらいますよ、と静かに、しかし、脛に傷持つ身にはさぞ恐ろしく響くであろう声音でそう告げた。
「はい…」
“神様”は、次の試験では必ずや、と言いかけたが、青年がその言葉を制した。
「その試験ですが、次回、100年後まで延期します。こんな騒動を起こすあなたには、受験資格は到底与えられません」
「えええ!? 100年待つんですかあ!?」
悲痛な声が響く。
「試験が、100年先伸ばし。まさに、のびるのびるの神様ね」
「「うまいっ!」」
少女の言葉に俺と少年は思わず反応し、神様は全然うまくない、と、またぷうっと頬を膨らませた。
「反省していないようですね? 今後のことは後でじっくり話し合いましょう。
では皆さん、私たちはこれで。あ、そこのお2人、お家に戻しますのでご安心を」
そう言うと青年は再び腕を振り、驚いて固まったままの少年と少女は、かき消すように姿を消した。
最後に俺に視線を向けて、受験がんばって、あなたは合格先延ばしにしないようにね、と、大きなお世話、もとい、貴重なアドバイスを残し、“神様”の襟首を引っ掴んだ“お師匠様”も姿を消した。
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