のびるのびるの神様

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「なんじゃ、驚かすな、ばか者が」  情けない悲鳴を上げたのがよっぽど業腹だったのか、ぷりぷりと頬を膨らませて怒る幼児。苦情は聞き流し、 「何だお前、どこの子だ? 迷子か?」  と訊いてやると、膨れた頬がハコフグのようにますます膨れ上がった。 「迷子ではない」 「じゃあ、何だよ? 勝手に人んちに上がり込んで」 「うむ、聞いて驚くな」 「何を?」  子どもは勿体ぶった態度で重々しく言った。 「我、神ぞ」 「は?」 「我、のびるのびるの神ぞ」 「え?」  理解が追い付かない。なんかこいつ、危ないやつか? 改めて子どもを見ると、服装もなんだか変だ。まるでお父さんのワイシャツを着こんだような。でもって、某人気娯楽施設で売っている魔法の杖のようなものを持っている。 「あ~、もしかして、買ってもらって嬉しすぎて浮かれてる? それとも学芸会の練習か? 悪いけど、今勉強が忙しくて、相手している暇がないんだ。  さ、おうちに帰りなさい」  軽くいなすと、 「だから! 神だって!」  床を踏み鳴らしながら叫ぶその姿は、思い通りにならなくて地団太を踏む子どもそのもの。どこが神? 思った途端に、 「無礼者! どこが神とはなんだ!」  と言われた。え、心を読んだ? 何だ、本物か? いやそんなバカな。だけど、今確かに…。 「やっとわかったか、我が人間の子どもではないことが」 「うーん」  確かに不思議な力があるのかもだけど、でも、俺は今こんなことしてる場合じゃないんだ。とっととお引き取り願わねば。 「で、その神様が何の用?」 「おお!」  ぱあっと顔を明るくして、“神様”は満面の笑みを見せた。
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