1人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんじゃ、驚かすな、ばか者が」
情けない悲鳴を上げたのがよっぽど業腹だったのか、ぷりぷりと頬を膨らませて怒る幼児。苦情は聞き流し、
「何だお前、どこの子だ? 迷子か?」
と訊いてやると、膨れた頬がハコフグのようにますます膨れ上がった。
「迷子ではない」
「じゃあ、何だよ? 勝手に人んちに上がり込んで」
「うむ、聞いて驚くな」
「何を?」
子どもは勿体ぶった態度で重々しく言った。
「我、神ぞ」
「は?」
「我、のびるのびるの神ぞ」
「え?」
理解が追い付かない。なんかこいつ、危ないやつか? 改めて子どもを見ると、服装もなんだか変だ。まるでお父さんのワイシャツを着こんだような。でもって、某人気娯楽施設で売っている魔法の杖のようなものを持っている。
「あ~、もしかして、買ってもらって嬉しすぎて浮かれてる? それとも学芸会の練習か? 悪いけど、今勉強が忙しくて、相手している暇がないんだ。
さ、おうちに帰りなさい」
軽くいなすと、
「だから! 神だって!」
床を踏み鳴らしながら叫ぶその姿は、思い通りにならなくて地団太を踏む子どもそのもの。どこが神? 思った途端に、
「無礼者! どこが神とはなんだ!」
と言われた。え、心を読んだ? 何だ、本物か? いやそんなバカな。だけど、今確かに…。
「やっとわかったか、我が人間の子どもではないことが」
「うーん」
確かに不思議な力があるのかもだけど、でも、俺は今こんなことしてる場合じゃないんだ。とっととお引き取り願わねば。
「で、その神様が何の用?」
「おお!」
ぱあっと顔を明るくして、“神様”は満面の笑みを見せた。
最初のコメントを投稿しよう!