スクランブル飛行機

2/3
前へ
/8ページ
次へ
 その後の僕は加賀さんを質問攻めするように疑問を投げかけた。  すべてを丁寧に答えてくれた加賀さんによると、カップアンドボールの出現から十二時間。様々な言語での対話やあらゆる試みがされているがどれもが無反応に至ったようだ。 「対話の可能性はすべて試みるべしと、発祥国とされている日本人によるけん玉が立案されました。権威がある方にという方針で選別しましたが、藤原一成さんは現在入院中だと伺っています」 「そうですね。爺ちゃんは一昨年くらいから入院してます。でも、尚更僕がその…宇宙人の前でけん玉する理由にならない気がするんですけど」 「様々な事を考慮した結果ですので。遠い血筋にはなりますが、現代のけん玉を考案した家系にあなたが含まれているのも関係しています」  僕ですら知らない事実をすらすらと告げていく加賀さんの話に、もう疑いをかける気力さえなくなっていた。 「それで、僕はその話を辞退してもいいんですよね?」 「これは世界的な機密ですので、ここまで聞いてしまった以上は協力していただくことになります」 「いやでもそんな、だって僕はここ最近けん玉にすら触れてないんです。急にバイト先に押しかけられて宇宙人の前でけん玉しろなんて無茶苦茶ですよ!」  そもそもお願いだなんて言い方をしていたが、断るという選択肢が用意されている気配がこれっぽっちもしないでいた。 「それじゃあ僕はこれからどうなるんですか?」 「一刻を争う事案になるので、今からアメリカへ一緒に向かって貰います。親御さんの許可もいただいていますので、外部との連絡はくれぐれも控えてください」  相変わらず決めていた言葉を返すような加賀さんに、がっくしと肩を落としてそのまま座席に深く背を持たれかけさせる。  パスポートはどうなるのか、アメリカまで何時間かかるのか、際限なく湧き上がる疑問を隅に置いて目を外へと向けた。  こんなでたらめな話はすべて嘘であってくれと願う一方で、車は確かに最寄りの空港を目指しているようだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加