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小人と呼ぶにも小さな大きさで、しかしおじさんと呼ぶには相応しい風貌をしているのです。
目元の小皺を増やすように目を細めて口元は困ったようにへの字に曲げて私の髪をひと束掴み必死で引っ張っているではありませんか。
恐怖と気持ち悪さとで詰まらせるように締め付けられた喉からはモスキート音のような掠れた甲高い声が出てゆきました。
ガチャリ
突然扉の音が鳴り誰かがここへやってきました。
「みゆきちゃん、おはよう。」
鑑先生の優しい声でした。
みゆきは、鑑先生の顔を見るや否や助けを求めます。声にならない声で必死に。
「薬が強くて力が入らないんだね。もう少ししたら声も出るようになるし体も起こせるようになるから。」
みゆきの頭を撫でます。薬という言葉を聞き先生への不信感を強く抱きました。
優しい声がどこか不気味でとてもとても怖い気持ちでいっぱいになり、目に涙をたくさん浮かべます。
「この部屋から出れないけども何も不自由はさせないから。体もちゃんと僕が綺麗にしてあげる。ご飯ももう時期用意ができるからね。」
「ど・・・して・・・。」
絞り出した声でみゆきは先生に問いかけます。
「みゆきちゃん、君はこの世で一番美しい。答えはそれだけだよ。」
そう言葉を残すとみゆきの汗ばんだ額に優しく口付けをします。
鑑先生は名残惜しそうにみゆきのことを見つめながらゆっくりと部屋を出てゆき扉を閉めガチャリと鍵の音をたてて出て行きました。
この絶望的な状況に整理をつけることは難しく、ふと思い出したかのうように再び髪の方へと目を向けます。
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