暖かい食事

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暖かい食事

この小さなおじさんはどうやら害はなさそうだと、どこか心細く寂しい気持ちによりどころを感じだします。 しかし特別に会話をしてくれるわけでもなく、みゆきを助けるそぶりは見られません。 ふと、自分からママに連絡しなかったことに後悔をします。 もしママが今日家庭教師にお願いしていることを忘れていたら?そもそも私がきていることを知らなかったら? ひとつひとつ改めて落ち着いて考えくと、身体中の水分が出いく程の大粒の涙が次から次へと溢れ出てゆきます。 薄暗闇の中また鍵と扉が開く音がし部屋に先生が入ってきました。 「食事を持ってきたよ、みゆきちゃんお大好きなジェノベーゼだ。」 「先生助けて、私先生がこんなことしたって絶対言わないから、内緒にするから家に帰して。」 「声が出るようにはなったんだね。よかった、あれ?枕。」 鑑先生は不思議そうに枕に触れます。その上には小さなおじさんがまだいびきをたてて眠っていたが、鑑先生はそのおじさんには一言も触れずに枕をもちあげてしましました。 すると枕からおじさんは転げ落ち私の足元へとズドンと転がり落ちます。 不意を突かれたようにおじさんは腰を摩りますが、鑑先生におじさんは見えていないようで、不思議そうな表情を見せて枕を戻します。 「お願いおうちに帰して。先生の言うことちゃんとなんでも聞くから。」 必死に懇願するみゆきを見て、少し考えながらも鑑先生はベッドのそばにある小さな円テーブルにパスタを置くとこう言いました。 「素直でいい子だ。見た目も何より美しく、この僕の作ったジェノベーゼが君の体の中に入っていくと想像するだけで。」 鑑先生は表情を綻ばせながらズボンのポケットをごそごそとまさぐり少しもじもじと体をよじらせています。 その奇妙さと気持ちの悪さにみゆきは鑑先生への恐怖心がどんどん増し、このジェノベーゼは食べれないと悟りました。 先生は、ポケットから小さな鍵を取り出し手足の鍵を外していきます。 「みゆきちゃん、ちゃんと食べてくれる?僕が食べさせてあげようか。」 「だ大丈夫です・・・あの、わたしまだこの環境に、その、慣れてなくて。その、少し1人で気持ちを落ち着かせたいから・・・1人で食べます。」 「本当に、たべてくれるね、少しでも残したらまた手を縛ることになっちゃうからね。」 鑑先生は少し安堵した様子でズボンの中へと手を入れ込み、そこからフォークを取り出してお皿の横へとおきました。 マナーよくちゃんと食べるんだよとそう言い残し、先生はまた部屋をあとにしました、ガチャリと鍵をかけて。
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