朝の道、暮れの道

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 健康のため、朝と晩、欠かさず散歩をしているのだが、その時に出会う人達がいる。  朝に出会う人達は皆穏やかな表情で、目が合ったら無言で会釈し、すれ違う。だけど暮時に出会う人達とは、決して目を合わせてはならない。  向こうがこちらに近づいてきても、たとえ顔を覗き込んでも、何も言わず目を合わさず、そっとそっと通り過ぎる。  黄昏の中で出会うのは、みんな、数日のうちにこの世を去り、あちらの世界に向かう人達。ただ、時間帯によって行先は違う。  朝日の中を進むのは、これから上るまばゆい光に導かれ、天国へと向かう人。  夕日の中を歩くのは、この先訪れる宵闇よりもなお暗い、地の底の深い闇へと向かう人。  上へ向かう人達は皆穏やかに前へ進み、下へ行く人達は、何とかこちらに留まれないか、いっそ誰かを道連れにできないか、足掻いて足掻いて辺りをうろつく。それでもその足は目的地にしか向かえないのだけれど。  朝の散歩でその人達を見かけ、暮れの散歩でまた見かける。そうやって、今日も俺の一日が終わる。 朝の道、暮れの道…完
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