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実際のところ、たしかに後宮に入った后妃の生活は、己自身でする事など、たかが知れていた。
日々の細々としたことや身の回りの世話はすべて女官が取り仕切っている。
そのせいか、むしろ、自分のことを自分でやろうとすると、叱られる始末だった。
我々の仕事を奪い、辞めさせるつもりか、とまで言われれば、引くしかない。
そうなると、綉葩本人がすることといえば、せいぜい凝った刺繍をすることか、窓辺に座って庭を眺めることだけ。
つまり、足を使わなければならない場面は、あまり多くはないとも言える。
そんな状況なら、せめて書物でも読もうとしたが、それも禁じられていると教えられた。
后妃に、皇帝の機嫌を取る以外の知性は必要ない、という理屈だった。
そんな生活に、すぐに倦むのもしかたないだろう。
豪勢な料理も、華美な衣装も、はじめこそ心が揺さぶられたものだが、そんな時期はあっという間に過ぎ去った。
あとに残されたのは、退屈を持てあますだけの、膨大な無為の時間。
この宮に来てから、すでにもう約二年。
そのあいだ、伽に呼ばれたことは数回しかなかった。
つまり、皇帝からの覚えがめでたいというわけでもない。
そんな存在なのに、一度後宮に入ったなら、もう一生ここから出ることはない。
なんとも虚しい人生だと、綉葩は思う。
他の后妃たちは権勢争いに夢中なようだが、自分はどうにもその手のことは苦手だ。
しかし、この足では逃げ出すこともかなわない。
ここで生き続けていくことを、受け入れるしかなかった。
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