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- 貳 - 砂漠の端の国
綉葩は、もともとは西方の砂漠の端にある、小さな国の王女だった。
素朴な作りの服を好んで身につけ、砂地を裸足で駆けまわり、人々が集うオアシスの沐浴場にふざけて服のまま飛び込むような活発な娘。
そのため周りからは、おとなしい性質の兄の王太子より、よっぽど勇猛な武人になろうという冗談まで言われていた。
決して豊かでもなく、最先端の文化があるわけでもなかった、取るに足らないような国。
それでも、おおらかでのんびりとした自分の故郷の生活を、心から愛していた。
しかし、慶邁帝の派遣した軍を何度も押し返し、武名を轟かせた父王が亡くなると、運命は一変した。
王位を継いだ兄に、戦の才能はまったくなかった。
その頃進軍してくるのは、やる気の薄い軍だった。
本気で討伐に来るというよりは、辺境を任された将軍がノルマを果たすためにやってくるような、小手先の戦をしかけてくるような。
ところが、戦の才能のない兄の指揮する国軍は、それすら度々苦戦した。
そして結局、臣従同盟を結んで属国となることが決まってしまった。
そして慣例通り、ある程度の自治を認める代わりに、武力の放棄と定期的な貢ぎ物を納めることとなる。
そして、そのために揃えられた物品のなかに、綉葩も含まれていた。
色好みで有名な慶邁帝たっての希望で、後宮へと招かれたのだ。
臣従を誓った立場上、これを断ることは考えられなかった。
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