- 貳 - 砂漠の端の国

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 そもそも、このあたりは小さな国々がひしめくように存在していて、各国の王族どうしの政略結婚は、当たり前といえば当たり前のことだった。  綉葩の母も隣国から嫁いできた身で、結婚前には父の顔も見たことはなかったという。  それでも夫婦仲は睦まじく、父より先んじて五年ほど前に母が亡くなって以来、王として再婚をまわりじゅうから勧められても、なかなか首を縦にはふらないほどだった。  一夫多妻の国もあり、だから綉葩自身でさえ、貢ぎ物を積んだ隊商とともに不毛な砂漠をはるばる越え、二度と出ることのない自分の宮に入るまでは、(おのれ)の境遇に疑問を持つことはなかった。  そう。  翌日さっそく、足を切られる処置を、施されるまでは。  いくら麻酔と外科の技術が発達している国とはいえ、自分で歩く力を奪われた屈辱は、今でも忘れることはできない。  というか、処置を施されて以来ずっと続く鈍い痛みが、忘れさせてはくれない。  そうやって、彼らにとっての『見栄えのよさ』だけのために、肉体を損傷されたことにも怒りを覚える。  聞けばこの処置に失敗して、後宮に入った早々、命を落とす者までいるという。  そんな事例があってもなおこの慣習が連綿と続いていること。  それはつまり。  自分たちは人間ではなく玩具として扱われているのだと、すぐに理解した。
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