- 参 - 夜の熱

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 やがて寝所に着き、絹の布団が積み上げられた寝台へと降ろされる。  退室の略敬礼をすると、煕佑は顔を伏せたまま、部屋の戸のすぐ脇に垂れている飾り紐を引いた。  その先は、担当の宦官の部屋へと続いている。  そこで待ち受けている者が合図を受け、皇帝の元へと馳せ参じるのだ。  やがて、高位の宦官たちに付き添われて、この広大な権力の園の主がやって来る。  それを待たずに、煕佑は部屋を去っていった。  ほどなくやってきた老齢の皇帝が、すぐに布団へと入ってくる。  寄り添われ、太く短い指が肌を這うと、今度は寒さではない原因で、肌が粟立った。  煕佑の身体の熱はあんなに心地よかったというのに。  慶邁帝のそれは、ひたすら不快でしかなかった。  長年の飽食のせいでブヨブヨと肥え太った身体は、肉塊と呼ぶにふさわしい。  そればかりか、奇妙な冷たさまである。  優しい触れ合いも、心を(ほど)く言葉もないまますぐにのしかかられ、綉葩はただただ押し黙って吐き気をこらえ続けるしかなかった。
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