3人が本棚に入れています
本棚に追加
- 肆 - 思いがけない寵
次の日の夜も、綉葩は寝所へと呼ばれた。
続けてなど、初めてのことだった。
「綉葩さまは近頃いっそう美しくなられましたから」
筆頭侍女の黄汐諾が誇らしそうに言う。
「皇上もお気づきになられたのでしょう」
後宮でもかなり古参の女官だが、この国の習慣に不慣れな綉葩の教育係兼お目付け役として、側仕えに抜擢された中年の女性だ。
つまりは、綉葩自身の望みや幸せを思って、喜んでいるわけではない。
辺境から来た田舎者を、皇帝が気に入るほどの女性に仕込めたとあれば、己の評判があがる。
それが、誇らしいのだ。
「美しく……?」
誉め言葉にぴんとこない綉葩が鸚鵡返しに訊くと、頷いた。
「愛されることで、女性としての華がお開きになられたのでしょう。肌をよりお磨きになられるよう、新しい薬湯を調合させましょう」
あの爺のために肌を磨くなど……と言いかけ、やめた。
もしも薄衣で隔てていたとしても。
己の皮膚の感触を、煕佑が感じてくれているのなら。
心地よい肌触りを彼に与えるためなら、そうするのも悪くないように思えた。
そして、それから一週間。
どこをどう気に入られたのか、寝所へと続けて呼ばれた。
最初のコメントを投稿しよう!