- 肆 - 思いがけない寵

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- 肆 - 思いがけない寵

 次の日の夜も、綉葩は寝所へと呼ばれた。  続けてなど、初めてのことだった。 「綉葩さまは近頃いっそう美しくなられましたから」  筆頭侍女の(こう)汐諾(せきだく)が誇らしそうに言う。 「皇上もお気づきになられたのでしょう」  後宮でもかなり古参の女官だが、この国の習慣に不慣れな綉葩の教育係兼お目付け役として、側仕えに抜擢された中年の女性だ。  つまりは、綉葩自身の望みや幸せを思って、喜んでいるわけではない。  辺境から来た田舎者を、皇帝が気に入るほどの女性に仕込めたとあれば、己の評判があがる。  それが、誇らしいのだ。 「美しく……?」  誉め言葉にぴんとこない綉葩が鸚鵡(おうむ)返しに訊くと、頷いた。 「愛されることで、女性としての華がお開きになられたのでしょう。肌をよりお磨きになられるよう、新しい薬湯を調合させましょう」  あの爺のために肌を磨くなど……と言いかけ、やめた。  もしも薄衣で隔てていたとしても。  己の皮膚の感触を、煕佑が感じてくれているのなら。  心地よい肌触りを彼に与えるためなら、そうするのも悪くないように思えた。  そして、それから一週間。  どこをどう気に入られたのか、寝所へと続けて呼ばれた。
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