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「この黒崎さんという人物に関しては?」
「黒崎さんは、数週間前カフェで偶然お会いした人です。その後何度かお会いしました」
「なるほど。何度か会ったことがある、ね。会社経営者という他に何かありますか?」
「三十代前半くらいの人です」
私は必死に黒崎さんを思い浮かべる。
「長身で、ぱっと見は細いんですけど、こう着痩せするタイプというか、筋肉は程よくついてる感じの人です」
「人相は?」
「えっと、黒髪で、わりと綺麗な顔立ちの男性です。……あ、俳優の〇〇さんに似た感じです!」
荻野刑事と藤井刑事は眉根を寄せながらお互い顔を見合わせた。
「……なかなかのイケメンですね。ロマンス詐欺でしょうか?」
藤井刑事がそう言うと、荻野刑事は呆れたような憐れんだような表情で私を見た。頬が急にカッと熱くなる。
「ロ、ロマンス詐欺!??そ、そりゃ確かに『君、かわいいね』とは言われましたけど、好きとかそんなんじゃありません!」
あー、はいはいと荻野刑事は適当に返事をしながら、再び私の言葉をメモした。
「あのね、一ノ瀬さん」
荻野刑事は軽く溜息をついた。
「闇サイトとか闇バイトとか、確かにお金に困ってそんなバイトを安易に引き受ける若い子が多いけど、あれ殆ど犯罪に関わるバイトばかりだから。テレビでもよく取り上げられてるでしょう」
「だから私は闇バイトとかそんなのには手を出してはいません!そもそもお金には困ってません。調べてもらっても構いません!」
スマホの閲覧履歴を見られて恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。このままじゃ犯罪者にされてしまう。
「はいはい。それはちゃんと調べますから。では一ノ瀬乃愛さん、19時45分、詐欺の容疑で逮捕します」
「ひえぇっ!!」
荻野刑事が冷たく事務的に言い放つのを聞いて、私は縮み上がった。
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