第1章

12/12

782人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
 「十分な根拠もなく逮捕なんてすれば、国家賠償法に基づき損害賠償責任を負うことになるし、刑事責任だって問われる可能性もある。そんなことになれば指揮官である俺の責任は免れない」  「はい……」  荻野刑事は悔しそうにするものの、南條さんの言うことに一理あると思ったのだろう。少し恐縮したように頭を下げた。  「ただし、一ノ瀬さん、あなたの容疑が完全に晴れたわけではありません」  南條さんはピシャリと言うと、突き刺すような視線を向けた。  「また後日、捜査に協力していただくことになる場合もあるかと思います。連絡先などをこちらに書いていただけますか?」  「も、もちろんです!!」  私は勢いよく答えると、南條さんから渡された書類を受け取った。そして刑事さん達が渋い顔をして見守る中、震える手で住所や電話番号などの連絡先を書いた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

782人が本棚に入れています
本棚に追加