第2章

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第2章

 「本当に……ありがとうございました」  それから30分後、無事警察署を出た私は早速奏さんに頭を下げた。この弁護士さんが私をかばってくれなかったら、今頃逮捕されて留置所かどこかにぶち込まれていたに違いない。  「いや、君こそ大変だったね。大丈夫?」  「はい、南條さんの、その……奏さんのおかげで本当に助かりました。あの、お祖母様にはご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした。いつか、ご家族の方には改めてお詫びをさせてください」  そう謝罪して俯くと、肩を震わせた。申し訳なさと、情けなさ、それと安堵で涙が出てくる。  「……よく頑張ったな。もう大丈夫だ」  低く落ち着いた声が頭上から下りてきて、大きな手がそっと頭を撫でる。彼の気遣いと安心するような声に、ぶわっと再び涙が溢れた。慌てて服の袖で涙をゴシゴシと拭く。  なぜかわからないけど彼のそばにいるとホッとする。自分はもう大丈夫なんだと、大きな安心感に包まれる。初対面なのにこんな気持ちになるなんて、本当に不思議だ。    涙の滲む目で見上げると、彼はなぜか懐かしいものでも見るように眩しそうに目を細めている。  「……それじゃ、行こうか」  「あ、はい!」  奏さんはゴシゴシと涙を拭いている私を見てクスっと笑うと前を歩き出した。  警察署を出る時、疲れてげっそりしている私を見て、彼が家まで送ってくれると申し出てくれた。これ以上迷惑をかけるのは申し訳なくて最初お断りしたけど、  「今にも倒れてしまいそうだ。そんな格好でこの時間歩いてると、また何かに巻き込まれる可能性もある」  ともっともらしい事を言われてしまい、ここは彼に甘えて家まで送ってもらうことにした。    車は2ブロック先にある駐車場に停めてあるらしく、ネオンの灯りで輝く街を二人でゆっくりと歩く。
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