第2章

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 (それにしても、奏さん目立つなぁ)  行き交う女性が皆ぼーっと彼を見ながら通り過ぎる。何も女性に限った事じゃない。男性だって通りすがりに彼をチラリと見る。  取調室でも思ったけど、彼は驚くほど綺麗な顔立ちをしている。  年齢は30代前半だろうか。背は高くて160cmの私よりも頭一つ以上高い。それに運動もしているのか、ラフな白シャツに黒いジャケットを着ていても肩や胸板がしっかりしているのがわかる。でもムキムキと筋肉がついているという感じではなくて、バランスよくついている感じだ。  顔立ちに甘さはない。どちらかというと鋭さと知性を兼ね備えた、落ち着いた大人の男という感じがする。日本人離れした深い彫りの整った容貌に、切れ長の鋭い目。それに何よりも、彼自身が持つ独特の雰囲気(オーラ)が今まで会ったどの男性とも全く違う。  一目見て、生まれながらに人の上に立つ種類の人間だとわかる。まるで高貴な貴族のような威厳とでもいうのか、何か命令されると抗えないような、そんなオーラを漂わせている。でも確か南條家は元が高貴な貴族なので、これは遺伝子の中に組み込まれているのかもしれない。  ちょっと近寄り難く見えてしまうけど、左右均衡のとれた稀に見る美男子。でも少し残念なことに、こめかみの2cm上あたりに何かで切ったような古傷がある。  それにしても……、と心の中で少し首をかしげる。見れば見るほど彼とは以前どこかで会ったことのあるような既視感を覚える。  「なに?どうかした?」  ほけーっと奏さんを見ていたら、急に振り向いた彼と目があって思いっきりドキッとする。私は慌てて口を開いた。  「あ、あの、今日はどうして、その……肇さんと一緒に警察署に?」  「ああ、実はあの囮捜査に参加してたんだ」  そう言って、彼は視線を再び前に向けた。
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