第2章

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 車内は車体と同じように全て黒で統一されていて、今まで見たこともないような高級感溢れる内装になっている。  ゆったりとしたスペースに、座りごごちの良いレザーシート、ありとあらゆる機能に、中央には大きなタッチパネルがついている。そして何よりも、あの彼のつけている官能的な香水の匂いが、車内にふわりと漂っている。  「それじゃ、行こうか。シートベルトは締めた?」  「は、はい!」  奏さんは私が警察署で書いた住所を覚えていたのだろう。難なくタッチパネルに入力すると、早速車を発進させた。  彼は安定したハンドル捌きで夜の街をどんどん走る。そんな彼はただ運転しているだけなのに、とてつもなくかっこいい。  (奏さんの手、すごく大きいな……)  ステアリングを握る彼の手に視線が吸い寄せられる。  大柄な体躯にふさわしいしっかりとした大きな手。指も私と違って少しゴツゴツしてて長い。  それに手首に高級そうな腕時計があるのも、なんだかやけにセクシーに見えてしまう。  (……こんな魅力的な男性ならきっと婚約者とか彼女がいるよね。もしかしたら既に結婚してたりして)  先ほどから彼のことを意識してばかりいる自分の愚かさに、車のダッシュボードに頭をゴンゴンと打ち付けたくなる。  彼は弁護士で、しかもこんな高級車を所有しているくらいだからもちろんお金持ちなはず。それに紳士的で物腰が柔らかく、極め付けはこの素晴らしい容姿。こんな男性を世の中の女性が放っておくはずがない。  そんな事を悶々と考えながら再び彼を盗み見ようとそっと隣を見る。すると、どうやら赤信号で停止していたらしい。奏さんは再び面白そうに、そして懐かしものでも見るように微笑を浮かべながら、私を覗き込んでいる。  「ひゃっ……、か、奏さん……?」  「なに?」  盗み見ようとしたのがバレて顔を真っ赤にさせていると、奏さんはククっと笑った。  「ふっ……可愛いな……」  彼の零れ落ちるような色香にあてられて、私の心臓は痛いほど跳ね上がる。
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