第2章

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 「あ、あのっ……!」  赤く火照っている頬を誤魔化すようにゴホンと咳払いをした。さっきから挙動不審で、変な女だと思われているんじゃないかと思うと恥ずかしい。  「そう言えば、奏さんの御一家は警察官が多いんですか?その、さっき……肇さんが南條家は皆警察官になるのにって言っていたのを思い出して……」    「ああ、それは……」  ちょうどその時信号が青になり、奏さんは再び車を走らせた。  「俺の生まれた南條家は、皆警察官になるのがしきたりみたいになってて、実は祖父も親父も代々警察官なんだ。それに従兄弟達も検察官だったりと、皆同じようなフィールドで働いてる。だから俺も肇も小さい子供の頃から、親父の後に続いて警察官になるようにと厳しく育てられた。ちょっと気狂いじみてるだろ?」  そう言って奏さんは笑った。  「い、いえ!そんな事ないです。代々で警察官になるなんて、とても立派な事だと思います」  (やっぱり昔父から聞いたあの南條一族だ……。それにしてもすごいなぁ……)  昔から警察官僚の多い一族だとは聞いているけど、そもそも家業を継いで代々社長になるのとはわけが違う。  警察官、特にこの警察庁の警察官として採用されるには、まず国家公務員総合職試験に合格しなければならない。  これがなかなかの難関試験で、しかもこの試験に合格してさらに警察庁に採用されるのは、確か例年10人とか20人ほどという狭き門。  これらの警察官はいわゆるキャリア組と呼ばれ、その合格者もほとんどがT大法学部卒という超インテリばかりだと聞いている。  お兄さんの肇さんはあの歳で警視正ということはおそらくこのキャリア組だし、奏さんも弁護士になっているところをみると、きっと有名大学法学部出身に違いない。  優秀なDNAが代々受け継がれているんだと思うけど、なんとも羨ましい話。思わず羨望の眼差しで見てしまう。
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