第3章

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 「それは大変だったね。しかもこの大雨の中。今回は何機持ってったの?」  私は以前にも手伝ってこの近くにあるデータセンターに行ったことを思い出す。  基本的にガランとした大きな部屋に、サーバーがそれぞれのラックに入れられて何列もずらりと並んでいる。もちろんセキュリティーががっちりとすごくて、入るにもそれなりの許可が必要だったのを覚えている。  「今回は3台。早速午後から簡単に動作確認することになってるの。多分今週いっぱいはバグだししたりずっと細かく動作確認かな」  「じゃ、今週はすごい忙しそうだね」  「うん、でも来週は皆んなで飲み行くことになってるの。ねぇ、乃愛も一緒に来ない?」  彼女はお弁当箱から卵焼きを掴みながら私に尋ねてくる。  「うん、でもいいの?私エンジニアじゃないけど」  「もちろん、ウェルカムだよー。そんな、エンジニアじゃないとか関係ないし」  彼女はぷはっと笑った後、ちょっと悪戯っぽい笑みを口元に浮かべた。  「それに乃愛を誘って欲しいって前にも言われたんだよね」  「えっ、誰が?」  思わずガチッと身構えたのを見て、優華が再び笑い出す。  「まーた、すぐ警戒する。別にいいじゃん。たまには男性と付き合ってみたら?男友達は作るくせに、なんで誰とも付き合わないの?男嫌いってわけでもなさそうだし……」  「そ、それはそうなんだけど……」  私は俯いたまま、ゴニョゴニョと言い訳をする。    「と、とにかく私のことはどうでもいいの。そういう優華はどうなのよ。優華だって全然彼氏つくらないじゃん。こんなに美人でモテるのに」  「わたし?私は今自分の夢を追いかけるのに忙しいから」  優華はふふっと笑ってアスパラガスをポイっと口の中に放り込んだ。  「えっ、夢?優華、夢があるの?」  「実はね、私…来年から留学するんだ」  うふふっと嬉しそうにする彼女に、私は驚いて目を丸くした。
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